桃屋の創作テキスト置き場
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■君の意味と僕の意味 ■
ああ、どうしよう。 これは、これはきっと。 紛れもない―――
◇
「ルカー」
少し離れた場所から、彼女が俺を呼ぶ。
緑小高い丘の上、抜けんばかりの青空の下。
彼女の長い金髪が、日の光に照らされて、透けるように輝いている。
風に弄ばれた金髪を片手で押さえながら、いい加減足を止めたままだった俺に近寄り、鼻の頭を人差し指でちょこん、と小突いた。
「遅いぞー」
「お前が早いんだよ」
どうやらカイは何かを見つけたようで、先ほどから俺をせかす。
俺にはまだその「彼女が見つけたもの」が見つけられず、ただただカイに急かされるばかりである。
『早く早く』と俺の周りでちょこちょこ動く姿。
こんな仕草は、年相応で、いささか見た目や凛とした時とのギャップに唖然とさせられたりする。
俺も視力には自信があるのだが、カイには到底及ばない。
まるで野生だなとかつてからかったら、そりゃ仕方ないでしょと笑って言った。
『だって、エルフの血が流れてるからね』
そう、あっさりと言い放った。
普通だったら、何をふざけた事をと思うかもしれないが、その時俺は、彼女なら有り得ると、本気で思ったものだ。
輝く金髪も、美しく整った顔立ちも、抜きん出ている身体能力も。
「ルカ?」
彼女の声で、我に返り、目を合わせる。
下から覗き込まれて、彼女の顔に俺の影が落ちる。
「どしたの?」
「ん?」
無言のままでいたのを不審がられたのか、カイが僅かに眉をひそめる。
―――言えやしません。見とれてたなんて。
「なんでもねえよ」
「変なのー」
肩を落としたように微笑んで、
『そうそう、やっと着いたよ』と、俺の背中を押す。
「だからー、さっきからお前はいったい何を騒いで・・」
「ふふふー見てのお楽しみ」
カイは言うと、俺の手を取り引き寄せて歩き出す。
僅かに歩みを進めると、一瞬にして、世界が変わった。
「うわ・・!」
「すごい綺麗、ね?」
思わず声を漏らすほどの、美しい景色。
遠くに映る、未だ雪の溶け切らぬ山々の峰。
その前方に、深くい青緑を湛えた、広大な湖。
木々は青く茂り、湖面に太陽が反射して、きらきらと無数に光を放つ。
時折風が吹いて、水面を揺らし、木々や花々を踊らせ、雲を連れて来ては連れて行く。
見渡す限り、一面の碧、だ。
俺達はしばらく言葉を失い、その場に立ち尽くしたままになっていた。
彼女は俺の手を握ったままだったし、二人の体は寄り添うようにくっ付いたまま。
二人で、この景色に酔いしれて。
「・・・・・うわ!」
ぼすっと言う音と共に、俺は草っぱらの上に尻餅をつく。
どれ位経ったのだろうか。
あまりに景色ばかりに見とれすぎて、平衡感覚すら失って、情けないことにそのままこの有様だ。
「大丈夫?」
「おー、尻の骨が痛いけど」
「それは一大事だわ」
半眼になって尻をさすると、大げさに彼女は心配するふりをして、笑う。
ああ、これが――
「あ、ねえルカちょっと待ってて?」
「んあ?」
「ちょっとだけ!」
「おい、カイ?」
返事をし終わるより早く、再び何かを見つけたらしい彼女は、尻餅をついたままの俺を置き去り、とことこと小走りに走っていった。
「ふー」
四肢の力を抜いて、そのままごろんと寝転がる。
青く輝く芝生の、良い香りが備考を掠める。
そのまま大きく深呼吸。
綺麗な空気を思いっきり吸い込んで、流れる雲を目で追って。
「・・・・のどかー」
「ルカの顔が?」
思わずぼそっとつぶやいた台詞に、いつのまに戻ってきたのか、カイが後を引き継いだ。
「ルカ、はい口あけて」
「は?」
問い返すより早く、彼女は俺の口に何かを突っ込む。
「・・・・うへ、あっまい」
「なんかね、なんとか砂糖を使った焼き菓子だって」
横に座って、その「何とか焼き菓子」を口に入れる彼女。
「何だよ、そのなんとか砂糖って」
「ここらへんの名産品で、疲れが取れやすいんだって。しかもおいしい」
カイの説明を聞きながら、口の中身を飲み込む。
確かに、別段特異的な味では無いが、美味いし、後を引く。
「・・・もいっこくれ」
「はいはい」
寝転がった状態のまま、わずかに首だけ持ち上げて、口を空けると、カイはなんのためらいも無く指でつまんだ菓子を俺の口に放り込む。
・・・まあ、いささか餌付けされてる鳥の気分も・・しないでもないが。
そのまま、しばらく二人ともぼーっとしてて。
横でカイは「何とか焼き菓子」をパクついてたりはしてたけども。
「なんかさ」
「うん?」
「平和だよな」
話すとはなしに、言葉が落ちてゆく。
「・・・そうだねえ」
カイはそう言うと、少し空を仰ぎ見て、僅かに肩を落として、
「どこかで戦争やいざこざが起きてるのも、嘘みたいだよね」
そう言って、少し悲しそうに目を閉じた。
俺は、何て言っていいか分からなくて、起き上がって無言のまま、彼女の髪の毛を指で梳いた。
「・・・なあ、カイ」
「んー?」
俺の指に、髪の毛の一房を取られたまま、彼女が振り返る。
その彼女の頬に触れて、ゆっくりと顔を近付けて行って。
目の前にある、ターコイズブルーの瞳と目が合って、はっと我に返る。
「あ・・・いや、その・・・・・・うがー!」
大急ぎで頬から手を離して、両手で彼女の頭を抱き込む。
カイは、ただ大人しく腕の中にいて、俺は内心すんごい動揺してたりして。
勝手なことして怒ってたらどうしようとか、嫌われたらどうしようとか、逆に考えると、もうちょっとだったのにとか、抵抗されなかったよなとか。
でもぶっちゃけ、カイは意味が分かってたんだろうかとか。
顔を赤く染めているのを見られたくないので、腕に力をこめる。
「ぎゃーつぶれるー」
「・・・・・・・すまん」
金髪にほっぺたくっ付けて、辛うじて声に出す。
「くるしー」
カイの声に、恐る恐る力を緩める。
「はー、空気ばんざい」
僅かに顔を上気させて、はーと息をする。
俺の腕の輪の中に留まったまま、今度は彼女の手が俺の両頬をぱちんと挟む。
「いてっ」
「キスしたかったの?」
「うへ?」
あまりに直球な問いかけに、引いたはずの熱がまた一気に上昇する。
「どうなの?」
「いや・・・あの・・・・」
顔が動かせないように手で挟まれて、俺はとうとう観念して、
「・・・・・・・・はい、すいません」
これ以上に無いくらい、きっとユデダコみたいなんだろうなあ、俺。
初恋でもなけりゃファーストキスなんて遠い昔なのに、情けないとは思うけど。
「何で謝るの?悪い事してないのに」
「いや、しようとはしたから」
ここまで来ると、もう万歳降参である。
素っ裸見られるよりも、恥ずかしいかも知れない弁明、釈明。
しかし、カイはそんな俺を気にする風でも無く、
「したいなら、すればよかったのに。はい」
と言うと、彼女の真意を確認する間も与えられぬまま、
カイの顔が近付いて来て、一瞬、柔らかい感触が唇に触れた。
「―――――え・・え?」
「ん?何?」
「今・・・・っ?」
一人で手で口を覆って、混乱してる俺に、立ち上がって尻やら足に付いた草を掃ってるカイ。
「そろそろ行こう」
「・・・・・・・・」
手を差し出すカイに、下を向いたままその手を取って、立ち上がる。
「カイ、お前、その・・」
「ん?どしたの?」
「いや、あの、・・キス・・」
まともにカイの顔が見れなくて、情けない事に目をそらしたままの俺に、彼女は空恐ろしい台詞を吐いた。
「ああ、キスなら毎日のように兄貴や父様にされてたから、慣れてるから気にしないで良いよー」
「あ、そうなの、それなら・・って、え?何だって?」
思わず顔を上げて声を荒げる俺に、しかしカイは、
「だから、毎朝毎晩のように兄貴も父様も『愛の証』とか言って抱きしめたりキスされたりは日常茶飯事だってって事」
「なにー!?あのくそ親父とくそ兄貴めー!」
何かもう、嬉しいんだかむかつくんだか訳が分からなくなったまま叫ぶ。
「ちょ、何で怒ってるの!?」
「なんででもじゃ!」
してもらえたのは嬉しいけど、奴らは許せん!
男心として当然だろう!うがー!
「もー、ルカのおこりんぼ」
「うるさいわぃ!」
苦笑する彼女に、俺は歩みを止めて振り返り、
「もっかい」
言うなり、彼女の頬を手で挟んで、今度は自分から。
さっきよりも長い時間、そうしていて。
風で彼女の髪の毛がなびいたのを合図に、ゆっくりと唇を離す。
目の前には、いつも通りの彼女。
赤いのは、俺だけ。
「ルカもキス好きって知らなかった。これからは毎日しよっか?」
「いい!死んでしまう!!」
彼女の無邪気な悪魔の台詞を背中に、俺はだすだすと歩き出す。
――ああ、神様。
あんまりに酷いと思いませんか?
当面の敵は、あのバカ父兄と、彼女のこの鈍さだなんて・・・。
不毛だ。
「何で怒ってるの?」
「秘密だ!」
「へんなの」
言えるか!
お前が・・・・好きだからだなんて。
◆
そう、紛れも無くこれは、恋なのだ――
ああ、どうしよう。 これは、これはきっと。 紛れもない―――
◇
「ルカー」
少し離れた場所から、彼女が俺を呼ぶ。
緑小高い丘の上、抜けんばかりの青空の下。
彼女の長い金髪が、日の光に照らされて、透けるように輝いている。
風に弄ばれた金髪を片手で押さえながら、いい加減足を止めたままだった俺に近寄り、鼻の頭を人差し指でちょこん、と小突いた。
「遅いぞー」
「お前が早いんだよ」
どうやらカイは何かを見つけたようで、先ほどから俺をせかす。
俺にはまだその「彼女が見つけたもの」が見つけられず、ただただカイに急かされるばかりである。
『早く早く』と俺の周りでちょこちょこ動く姿。
こんな仕草は、年相応で、いささか見た目や凛とした時とのギャップに唖然とさせられたりする。
俺も視力には自信があるのだが、カイには到底及ばない。
まるで野生だなとかつてからかったら、そりゃ仕方ないでしょと笑って言った。
『だって、エルフの血が流れてるからね』
そう、あっさりと言い放った。
普通だったら、何をふざけた事をと思うかもしれないが、その時俺は、彼女なら有り得ると、本気で思ったものだ。
輝く金髪も、美しく整った顔立ちも、抜きん出ている身体能力も。
「ルカ?」
彼女の声で、我に返り、目を合わせる。
下から覗き込まれて、彼女の顔に俺の影が落ちる。
「どしたの?」
「ん?」
無言のままでいたのを不審がられたのか、カイが僅かに眉をひそめる。
―――言えやしません。見とれてたなんて。
「なんでもねえよ」
「変なのー」
肩を落としたように微笑んで、
『そうそう、やっと着いたよ』と、俺の背中を押す。
「だからー、さっきからお前はいったい何を騒いで・・」
「ふふふー見てのお楽しみ」
カイは言うと、俺の手を取り引き寄せて歩き出す。
僅かに歩みを進めると、一瞬にして、世界が変わった。
「うわ・・!」
「すごい綺麗、ね?」
思わず声を漏らすほどの、美しい景色。
遠くに映る、未だ雪の溶け切らぬ山々の峰。
その前方に、深くい青緑を湛えた、広大な湖。
木々は青く茂り、湖面に太陽が反射して、きらきらと無数に光を放つ。
時折風が吹いて、水面を揺らし、木々や花々を踊らせ、雲を連れて来ては連れて行く。
見渡す限り、一面の碧、だ。
俺達はしばらく言葉を失い、その場に立ち尽くしたままになっていた。
彼女は俺の手を握ったままだったし、二人の体は寄り添うようにくっ付いたまま。
二人で、この景色に酔いしれて。
「・・・・・うわ!」
ぼすっと言う音と共に、俺は草っぱらの上に尻餅をつく。
どれ位経ったのだろうか。
あまりに景色ばかりに見とれすぎて、平衡感覚すら失って、情けないことにそのままこの有様だ。
「大丈夫?」
「おー、尻の骨が痛いけど」
「それは一大事だわ」
半眼になって尻をさすると、大げさに彼女は心配するふりをして、笑う。
ああ、これが――
「あ、ねえルカちょっと待ってて?」
「んあ?」
「ちょっとだけ!」
「おい、カイ?」
返事をし終わるより早く、再び何かを見つけたらしい彼女は、尻餅をついたままの俺を置き去り、とことこと小走りに走っていった。
「ふー」
四肢の力を抜いて、そのままごろんと寝転がる。
青く輝く芝生の、良い香りが備考を掠める。
そのまま大きく深呼吸。
綺麗な空気を思いっきり吸い込んで、流れる雲を目で追って。
「・・・・のどかー」
「ルカの顔が?」
思わずぼそっとつぶやいた台詞に、いつのまに戻ってきたのか、カイが後を引き継いだ。
「ルカ、はい口あけて」
「は?」
問い返すより早く、彼女は俺の口に何かを突っ込む。
「・・・・うへ、あっまい」
「なんかね、なんとか砂糖を使った焼き菓子だって」
横に座って、その「何とか焼き菓子」を口に入れる彼女。
「何だよ、そのなんとか砂糖って」
「ここらへんの名産品で、疲れが取れやすいんだって。しかもおいしい」
カイの説明を聞きながら、口の中身を飲み込む。
確かに、別段特異的な味では無いが、美味いし、後を引く。
「・・・もいっこくれ」
「はいはい」
寝転がった状態のまま、わずかに首だけ持ち上げて、口を空けると、カイはなんのためらいも無く指でつまんだ菓子を俺の口に放り込む。
・・・まあ、いささか餌付けされてる鳥の気分も・・しないでもないが。
そのまま、しばらく二人ともぼーっとしてて。
横でカイは「何とか焼き菓子」をパクついてたりはしてたけども。
「なんかさ」
「うん?」
「平和だよな」
話すとはなしに、言葉が落ちてゆく。
「・・・そうだねえ」
カイはそう言うと、少し空を仰ぎ見て、僅かに肩を落として、
「どこかで戦争やいざこざが起きてるのも、嘘みたいだよね」
そう言って、少し悲しそうに目を閉じた。
俺は、何て言っていいか分からなくて、起き上がって無言のまま、彼女の髪の毛を指で梳いた。
「・・・なあ、カイ」
「んー?」
俺の指に、髪の毛の一房を取られたまま、彼女が振り返る。
その彼女の頬に触れて、ゆっくりと顔を近付けて行って。
目の前にある、ターコイズブルーの瞳と目が合って、はっと我に返る。
「あ・・・いや、その・・・・・・うがー!」
大急ぎで頬から手を離して、両手で彼女の頭を抱き込む。
カイは、ただ大人しく腕の中にいて、俺は内心すんごい動揺してたりして。
勝手なことして怒ってたらどうしようとか、嫌われたらどうしようとか、逆に考えると、もうちょっとだったのにとか、抵抗されなかったよなとか。
でもぶっちゃけ、カイは意味が分かってたんだろうかとか。
顔を赤く染めているのを見られたくないので、腕に力をこめる。
「ぎゃーつぶれるー」
「・・・・・・・すまん」
金髪にほっぺたくっ付けて、辛うじて声に出す。
「くるしー」
カイの声に、恐る恐る力を緩める。
「はー、空気ばんざい」
僅かに顔を上気させて、はーと息をする。
俺の腕の輪の中に留まったまま、今度は彼女の手が俺の両頬をぱちんと挟む。
「いてっ」
「キスしたかったの?」
「うへ?」
あまりに直球な問いかけに、引いたはずの熱がまた一気に上昇する。
「どうなの?」
「いや・・・あの・・・・」
顔が動かせないように手で挟まれて、俺はとうとう観念して、
「・・・・・・・・はい、すいません」
これ以上に無いくらい、きっとユデダコみたいなんだろうなあ、俺。
初恋でもなけりゃファーストキスなんて遠い昔なのに、情けないとは思うけど。
「何で謝るの?悪い事してないのに」
「いや、しようとはしたから」
ここまで来ると、もう万歳降参である。
素っ裸見られるよりも、恥ずかしいかも知れない弁明、釈明。
しかし、カイはそんな俺を気にする風でも無く、
「したいなら、すればよかったのに。はい」
と言うと、彼女の真意を確認する間も与えられぬまま、
カイの顔が近付いて来て、一瞬、柔らかい感触が唇に触れた。
「―――――え・・え?」
「ん?何?」
「今・・・・っ?」
一人で手で口を覆って、混乱してる俺に、立ち上がって尻やら足に付いた草を掃ってるカイ。
「そろそろ行こう」
「・・・・・・・・」
手を差し出すカイに、下を向いたままその手を取って、立ち上がる。
「カイ、お前、その・・」
「ん?どしたの?」
「いや、あの、・・キス・・」
まともにカイの顔が見れなくて、情けない事に目をそらしたままの俺に、彼女は空恐ろしい台詞を吐いた。
「ああ、キスなら毎日のように兄貴や父様にされてたから、慣れてるから気にしないで良いよー」
「あ、そうなの、それなら・・って、え?何だって?」
思わず顔を上げて声を荒げる俺に、しかしカイは、
「だから、毎朝毎晩のように兄貴も父様も『愛の証』とか言って抱きしめたりキスされたりは日常茶飯事だってって事」
「なにー!?あのくそ親父とくそ兄貴めー!」
何かもう、嬉しいんだかむかつくんだか訳が分からなくなったまま叫ぶ。
「ちょ、何で怒ってるの!?」
「なんででもじゃ!」
してもらえたのは嬉しいけど、奴らは許せん!
男心として当然だろう!うがー!
「もー、ルカのおこりんぼ」
「うるさいわぃ!」
苦笑する彼女に、俺は歩みを止めて振り返り、
「もっかい」
言うなり、彼女の頬を手で挟んで、今度は自分から。
さっきよりも長い時間、そうしていて。
風で彼女の髪の毛がなびいたのを合図に、ゆっくりと唇を離す。
目の前には、いつも通りの彼女。
赤いのは、俺だけ。
「ルカもキス好きって知らなかった。これからは毎日しよっか?」
「いい!死んでしまう!!」
彼女の無邪気な悪魔の台詞を背中に、俺はだすだすと歩き出す。
――ああ、神様。
あんまりに酷いと思いませんか?
当面の敵は、あのバカ父兄と、彼女のこの鈍さだなんて・・・。
不毛だ。
「何で怒ってるの?」
「秘密だ!」
「へんなの」
言えるか!
お前が・・・・好きだからだなんて。
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そう、紛れも無くこれは、恋なのだ――
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