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桃屋の創作テキスト置き場
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■想フ事■




 ずっと、あまり好かれていないだろうな、と勝手に思っていた相手と、二人で飲む事になった。





 彼は、私の想像よりもずっと真面目で、ストイックで、年不相応な位落ち着いていた。

 とても穏やかに酒を飲む人で、今まで私の周りにはいなかったタイプだ。




 正論を真っ直ぐに、事実を端的に言う人。
 古きを慈しみ、信念を持ち、確固たる自我を内包し。




 しかし笑うと、やはり年相応のかわいい顔になる。




 無知な私に対して卑下するでも無く、
 見下すでもなく、しかし当然ながら媚びる事も無く対話をする。



 そう、会話ではなく対話と言う表現が、きっとこの人には相応しい。




 彼は清流の様な人だ。
 神社の境内に居る様な、清らかな空気を感じる。
 彼には神聖とも呼べる領域が、ある。
 一歩引いた所で他人と対峙する事で、
 彼が彼らしく在り、他人を他人として存在させる事を可能にしている。



 奇特な人だ、と、私は思った。



 礼儀を重んじ、空気を把握し、
 相手を否定せず、しかし流されるでも無い。




 こんな人が居たものかと、私は静かに驚愕するのである。
 畏ろしい人だとも、思う。



 きちんと背筋を伸ばし、姿勢を正して、彼の前に立てる人間にならねば。
 と思わせる様な人だ。


 たかだか五歳だか六歳位しか違わない筈の若者であるが故、余計にそう思うのだろうか。



 しかし、こんな彼でも、部屋の中は人をあげられる様な状態では無いなどと言い、少し困ったように照れるのだから、かわいいものだとも思う。




 再び二人きりで酒を酌み交わす機会が来るとは、凡そ私には見当もつかないが、この僅か三時間弱の時間は、私にとって、間違いなく至福であった。


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