桃屋の創作テキスト置き場
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■BGM PROLOGUE 2■
「―――で、君は何であんなのに襲われてたのかな?」
取り合えず森を出て、街道沿いにある小さな宿。
どこの宿も同じような造りだが、この宿も例に漏れず、一階が食堂。客室は二階より上である。
その食堂の一番奥の席に陣取って、やおら兄ちゃんが口を開く。
・・・ウサギなんぞを追っかけてた奴が、何で飯代払えるんだ?と思うかも知れんが。
そこはそれ、飯も宿も兄ちゃんのオゴリ、と言うことで話はついてるのだ。
「えーっと・・・」
正直に襲われてた理由を言えばいいのかも知れんが、
『ウサギと間違えて野党に剣当てちゃったら、怒っちゃったんですよ♪えへ♪』
とかほざいた日には、無償で助けてくれた挙句、飯まで奢ってくれた兄ちゃん、怒り出すかも知れないし・・・。
「・・・ほら、俺の身体が目当てだったんじゃない?」
何が悲しゅうてこんな発言せにゃいかんのか分からんが、事実、奴らが「身体で払え!」とかゆーやり取りしてたのは事実だし。
いらん真実告げない為にも、俺は一人、涙を飲む。
「君、俺って言葉遣いは・・・・まあいいけど。
でも、やっぱりそうなのかー・・・・良かったね、間に合って」
運ばれてきたアイスティーをすすりつつ、安心した様に言う。
「間に合う・・・・って、何が?」
腹の虫が大合唱している俺は、運ばれてきた料理をいそいそと口に運ぶ。
うん、味はなかなか悪くないようである。
「何って、貞操が」
ぴき。
何の事はなしに言う兄ちゃん。一瞬俺が凍りついたのは内緒。
・・・しっかし、綺麗な顔してるとは言え、やっぱし男なんだなあ・・・
発言が全くオブラートに包まれていない所を見ると。
「で、君名前は?」
いきなり兄ちゃんが口を開く。
そう言えば、まだお互い名乗ってもいなかった事を思い出す。
「ルカ・ウェザードだ」
「カイ・ドゥルーガ。宜しく」
言って軽く微笑み、手を伸ばして俺の口の横についたらしい、食べこぼしのトマトソースを指ですくう。
「可愛らしい名前なんだね」
言ってカイは、その指をぺろっと舐めた。
「ぎゃ――――っ!!」
「ど・・どしたの、ルカ」
俺のいきなりな叫び声に、椅子から転げ落ちそうになるカイ。
「お前!んなエロっちー事すんなよな!」
「エロっちい、って何が?」
「こーしただろほっぺ触ってぺろって!」
きょとんとするカイに、ジェスチャーを交えながら叫ぶ。
コイツにやられてもちっとも嬉しくね――!!
「あー、ルカは可愛いなあって思ったら。ついね、つい」
言って再びにっこりと微笑む。
「だ――!その女オトす為の様な微笑みもやめろ――!!」
「あら失礼な。ルカの様なオコチャマには手は出しませんよ」
「俺はオコチャマじゃねえ!」
「食べこぼしが子供のし・る・し」
「うが―――!お前もう里へ帰れ―――!!」
―――どうにもこうにも賑やかな夕食は、
結局、俺の惨敗で終わったのだった・・・・。
一日空けて翌日。
俺は何故か、
何故か。
カイと並んで街道を歩いていた。
・・・・・・・あ・・・・・頭イタ・・・・
好ましくない状況に、一人、現実逃避を試みる。
あの後。
優雅な(?)夕食を終え、食後のミルクティーで俺が落ち着きを取り戻した頃。
カイはいきなり俺を家まで送る、とかぬかしやがったのだ。
無論。
一瞬で断った。
間髪入れず断った。
怒鳴りつつ断った。
逆ギレして断った。
――――――負けた・・・・・。
カイは、あんな危険な目に逢った俺を野放しにはしておけない、とか何とか理屈をこねていたが。
正直、心の底から遠慮したいもんである。
こちとら、行く先決めずにふらふら修行の旅と称しての一人旅である。
家に帰る気など、さらさら無い。
と、しこたま説得して、まあ、家まで送り届けるってのはなくなったんだが。
「どうした?ルカ。えらく浮かない顔してるけど?」
こっちの内心をよそに、まあ、えらく軽快な足取りしちゃって。
結局、又襲われでもしたらコトだってんで、せめて次の街に着くまでとゆー、まあ期間限定の二人旅ではあるのだが・・・・。
「・・・・・・・・・何でもない・・・カイは元気そうでいいねえ・・・・」
俺の皮肉をものともせず、ゆっくりと街道を行く彼。
昨日の無償での人助けや、宿代まで出してくれた人の良さ。
歩調が、恐らく俺に合わせてくれているんだろう速度な所を見ると、下心あっての二人旅、と言う訳ではなさそうなのだが。
何が悲しゅーて、十七にもなって護衛付けて歩かにゃいかんのだろう・・・。
みんな世間が悪いんだ・・・・(涙)
「隣のスフィルス王国まで、約二週間か。短い間だけど宜しくね、ルカ」
「――――――――――――よろしく」
にっこり微笑みをたたえるカイと、対照的な俺。
そんな二人を、お日様がぽかぽか照らすのだった。
―――ちっとも短くなんかないやい。
「あ、そう言えばカイっていくつなんだ?俺と大して変わらなそーだけど」
落ち込んでても仕方ないので、世間話を始める俺。
見たところ、せいぜい行ってても二十歳そこそこって所だろう。とか思いつつ。
「はっはっは、ルカ、レディに年を聞くのは失礼ってもんだよ」
「誰がレディだコラ」
「私」
「死ね。いっぺんで良いから」
こいつ、俺をからかって楽しんでるらしい。
何とゆー悪趣味なコトか。
「そーゆールカこそ、何歳?」
「十七」
「え゛」
あっさりさっぱり端的に答えた俺の言葉に、カイはしばし絶句する。
「・・・・何だよ・・・何か問題あるのか?」
「う――わ―――やっば――・・・」
問う俺を無視して、あさっての方向を見つめつつぽりぽりと頬を掻く彼。
そしておずおずと口を開き、
「えっと私の年はですね、十六なんですが・・・・」
「え゛」
言われて今度は俺が固まる。
「いやー、どうにもこうにもちっちゃくて可愛いから、てっきり年下だとばっかり」
「いやー、どうにもこうにもでっかくてフケてるから、てっきり年上だとばっかり」
二人の呟きが重なる。
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
「ちょい待ち、カイ。誰がチビだって?」
「ルカこそ、フケてるって誰のコトかなあ?あん?」
額に青スジおっ立てつつ、おでこ同士ぶつけ合いながら睨み合う。
「ちっちゃいのも可愛いのも事実!どーみても年下にしか見えなかったんだから仕方ないっしょ!」
「う――が――!!ちっこいとかかわいーとか言うな――!」
頭抱えて絶叫する俺。
好き好んでちっこい訳じゃないのだ。
「でも可愛いんだし」
「・・・・嬉しくない」
言いつつカイにチョップを繰り出す。
それをするりと避けながら、カイは顔を険しくする。
「ルカ」
真剣な声で呼び止められる。
間髪入れずにカイの腕が俺の腰に回り、ぎゅっ、と力を込める。
「え?え?」
状況が把握できずにうろたえる俺を無視し、カイは耳元でささやく。
「目、閉じて」
俺を抱く腕の力が増し、カイが俺より低く身を屈めて――
ぎゃー!
いきなりですか!?
俺襲われてる!?
じたばたもがく俺に、しかしカイは――
ゴオオッ!!
轟音と共にカイが跳ぶ。
腕に俺を抱えたままで。
「なっ!?」
辺りにはもうもうたる爆炎。
これは・・・火炎球!一体誰が!?
トンっ、と軽い音を立ててカイが着地する。
先程の爆炎が収まってゆく只中に、それは居た。
「―――誰からのご招待かね?」
カイは面白くもなさそうにそれに向かって口を開く。
「これはこれは。なかなかカンが良くていらっしゃる――」
煙の奥から現れたのは、愉快なピエロの様な格好をした一人の男。
―――ヤバイ。
俺は気付いていた。
辺りから、小鳥のさえずりも、風が木々を揺らす音すらも、消え失せていた事を――。
「カイ・ドゥルーガ様に、ご伝言がございまして」
そのピエロは、事もあろうにぷっかりと宙に浮いたまま、慇懃に礼をする。
「伝言?」
いぶかしげな声で問うカイ。手には既に剣を抜いている。
「アヤマチニハ シヲ ジヒハコントンノフチ スグカエレ イトシキ ウツシゴヨ
――以上でございます」
ピエロは淡々と言葉を紡ぐと、にやり、と微笑む。
奴の言葉に、カイの肩を少し、揺れた気がした。
「・・・・そう。で、その伝言を私が無視したら?」
カイが俺を自らの後ろにかばいながら。
「その場合も言付けられておりましたな」
ピエロは白々しく「そう言えば」と言って続ける。
「シタガワヌバアイ ソノクビモッテ キカンセヨ、と」
にいっ、と大きく笑みを形どる黒い唇。
俺は小さな声でカイに呟く。
「――強いぞ、アレ。見た目は愉快だけど」
「分かってる。ここ一帯が奴の結界の中みたいだしね」
どうやら、カイも気付いていたらしい。
だからと言って、事態が好転する要素は一つもないのだが。
「あれ、魔族じゃん?どーするよ?」
「決まってるでしょ。私はルカを送り届けにゃいかんのだから」
「頼んでないって」
「とにかく!」
言って、カイが疾る。
ピエロに向かって。
――勝てるのか・・?俺たちで?
俺は、急ぎ印を結びつつ、既に小さくなったカイの背中を見つめる。
顎を、雫が濡らして行くのを、嫌と言うほど鮮明に感じていた――。
「―――で、君は何であんなのに襲われてたのかな?」
取り合えず森を出て、街道沿いにある小さな宿。
どこの宿も同じような造りだが、この宿も例に漏れず、一階が食堂。客室は二階より上である。
その食堂の一番奥の席に陣取って、やおら兄ちゃんが口を開く。
・・・ウサギなんぞを追っかけてた奴が、何で飯代払えるんだ?と思うかも知れんが。
そこはそれ、飯も宿も兄ちゃんのオゴリ、と言うことで話はついてるのだ。
「えーっと・・・」
正直に襲われてた理由を言えばいいのかも知れんが、
『ウサギと間違えて野党に剣当てちゃったら、怒っちゃったんですよ♪えへ♪』
とかほざいた日には、無償で助けてくれた挙句、飯まで奢ってくれた兄ちゃん、怒り出すかも知れないし・・・。
「・・・ほら、俺の身体が目当てだったんじゃない?」
何が悲しゅうてこんな発言せにゃいかんのか分からんが、事実、奴らが「身体で払え!」とかゆーやり取りしてたのは事実だし。
いらん真実告げない為にも、俺は一人、涙を飲む。
「君、俺って言葉遣いは・・・・まあいいけど。
でも、やっぱりそうなのかー・・・・良かったね、間に合って」
運ばれてきたアイスティーをすすりつつ、安心した様に言う。
「間に合う・・・・って、何が?」
腹の虫が大合唱している俺は、運ばれてきた料理をいそいそと口に運ぶ。
うん、味はなかなか悪くないようである。
「何って、貞操が」
ぴき。
何の事はなしに言う兄ちゃん。一瞬俺が凍りついたのは内緒。
・・・しっかし、綺麗な顔してるとは言え、やっぱし男なんだなあ・・・
発言が全くオブラートに包まれていない所を見ると。
「で、君名前は?」
いきなり兄ちゃんが口を開く。
そう言えば、まだお互い名乗ってもいなかった事を思い出す。
「ルカ・ウェザードだ」
「カイ・ドゥルーガ。宜しく」
言って軽く微笑み、手を伸ばして俺の口の横についたらしい、食べこぼしのトマトソースを指ですくう。
「可愛らしい名前なんだね」
言ってカイは、その指をぺろっと舐めた。
「ぎゃ――――っ!!」
「ど・・どしたの、ルカ」
俺のいきなりな叫び声に、椅子から転げ落ちそうになるカイ。
「お前!んなエロっちー事すんなよな!」
「エロっちい、って何が?」
「こーしただろほっぺ触ってぺろって!」
きょとんとするカイに、ジェスチャーを交えながら叫ぶ。
コイツにやられてもちっとも嬉しくね――!!
「あー、ルカは可愛いなあって思ったら。ついね、つい」
言って再びにっこりと微笑む。
「だ――!その女オトす為の様な微笑みもやめろ――!!」
「あら失礼な。ルカの様なオコチャマには手は出しませんよ」
「俺はオコチャマじゃねえ!」
「食べこぼしが子供のし・る・し」
「うが―――!お前もう里へ帰れ―――!!」
―――どうにもこうにも賑やかな夕食は、
結局、俺の惨敗で終わったのだった・・・・。
一日空けて翌日。
俺は何故か、
何故か。
カイと並んで街道を歩いていた。
・・・・・・・あ・・・・・頭イタ・・・・
好ましくない状況に、一人、現実逃避を試みる。
あの後。
優雅な(?)夕食を終え、食後のミルクティーで俺が落ち着きを取り戻した頃。
カイはいきなり俺を家まで送る、とかぬかしやがったのだ。
無論。
一瞬で断った。
間髪入れず断った。
怒鳴りつつ断った。
逆ギレして断った。
――――――負けた・・・・・。
カイは、あんな危険な目に逢った俺を野放しにはしておけない、とか何とか理屈をこねていたが。
正直、心の底から遠慮したいもんである。
こちとら、行く先決めずにふらふら修行の旅と称しての一人旅である。
家に帰る気など、さらさら無い。
と、しこたま説得して、まあ、家まで送り届けるってのはなくなったんだが。
「どうした?ルカ。えらく浮かない顔してるけど?」
こっちの内心をよそに、まあ、えらく軽快な足取りしちゃって。
結局、又襲われでもしたらコトだってんで、せめて次の街に着くまでとゆー、まあ期間限定の二人旅ではあるのだが・・・・。
「・・・・・・・・・何でもない・・・カイは元気そうでいいねえ・・・・」
俺の皮肉をものともせず、ゆっくりと街道を行く彼。
昨日の無償での人助けや、宿代まで出してくれた人の良さ。
歩調が、恐らく俺に合わせてくれているんだろう速度な所を見ると、下心あっての二人旅、と言う訳ではなさそうなのだが。
何が悲しゅーて、十七にもなって護衛付けて歩かにゃいかんのだろう・・・。
みんな世間が悪いんだ・・・・(涙)
「隣のスフィルス王国まで、約二週間か。短い間だけど宜しくね、ルカ」
「――――――――――――よろしく」
にっこり微笑みをたたえるカイと、対照的な俺。
そんな二人を、お日様がぽかぽか照らすのだった。
―――ちっとも短くなんかないやい。
「あ、そう言えばカイっていくつなんだ?俺と大して変わらなそーだけど」
落ち込んでても仕方ないので、世間話を始める俺。
見たところ、せいぜい行ってても二十歳そこそこって所だろう。とか思いつつ。
「はっはっは、ルカ、レディに年を聞くのは失礼ってもんだよ」
「誰がレディだコラ」
「私」
「死ね。いっぺんで良いから」
こいつ、俺をからかって楽しんでるらしい。
何とゆー悪趣味なコトか。
「そーゆールカこそ、何歳?」
「十七」
「え゛」
あっさりさっぱり端的に答えた俺の言葉に、カイはしばし絶句する。
「・・・・何だよ・・・何か問題あるのか?」
「う――わ―――やっば――・・・」
問う俺を無視して、あさっての方向を見つめつつぽりぽりと頬を掻く彼。
そしておずおずと口を開き、
「えっと私の年はですね、十六なんですが・・・・」
「え゛」
言われて今度は俺が固まる。
「いやー、どうにもこうにもちっちゃくて可愛いから、てっきり年下だとばっかり」
「いやー、どうにもこうにもでっかくてフケてるから、てっきり年上だとばっかり」
二人の呟きが重なる。
・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・
「ちょい待ち、カイ。誰がチビだって?」
「ルカこそ、フケてるって誰のコトかなあ?あん?」
額に青スジおっ立てつつ、おでこ同士ぶつけ合いながら睨み合う。
「ちっちゃいのも可愛いのも事実!どーみても年下にしか見えなかったんだから仕方ないっしょ!」
「う――が――!!ちっこいとかかわいーとか言うな――!」
頭抱えて絶叫する俺。
好き好んでちっこい訳じゃないのだ。
「でも可愛いんだし」
「・・・・嬉しくない」
言いつつカイにチョップを繰り出す。
それをするりと避けながら、カイは顔を険しくする。
「ルカ」
真剣な声で呼び止められる。
間髪入れずにカイの腕が俺の腰に回り、ぎゅっ、と力を込める。
「え?え?」
状況が把握できずにうろたえる俺を無視し、カイは耳元でささやく。
「目、閉じて」
俺を抱く腕の力が増し、カイが俺より低く身を屈めて――
ぎゃー!
いきなりですか!?
俺襲われてる!?
じたばたもがく俺に、しかしカイは――
ゴオオッ!!
轟音と共にカイが跳ぶ。
腕に俺を抱えたままで。
「なっ!?」
辺りにはもうもうたる爆炎。
これは・・・火炎球!一体誰が!?
トンっ、と軽い音を立ててカイが着地する。
先程の爆炎が収まってゆく只中に、それは居た。
「―――誰からのご招待かね?」
カイは面白くもなさそうにそれに向かって口を開く。
「これはこれは。なかなかカンが良くていらっしゃる――」
煙の奥から現れたのは、愉快なピエロの様な格好をした一人の男。
―――ヤバイ。
俺は気付いていた。
辺りから、小鳥のさえずりも、風が木々を揺らす音すらも、消え失せていた事を――。
「カイ・ドゥルーガ様に、ご伝言がございまして」
そのピエロは、事もあろうにぷっかりと宙に浮いたまま、慇懃に礼をする。
「伝言?」
いぶかしげな声で問うカイ。手には既に剣を抜いている。
「アヤマチニハ シヲ ジヒハコントンノフチ スグカエレ イトシキ ウツシゴヨ
――以上でございます」
ピエロは淡々と言葉を紡ぐと、にやり、と微笑む。
奴の言葉に、カイの肩を少し、揺れた気がした。
「・・・・そう。で、その伝言を私が無視したら?」
カイが俺を自らの後ろにかばいながら。
「その場合も言付けられておりましたな」
ピエロは白々しく「そう言えば」と言って続ける。
「シタガワヌバアイ ソノクビモッテ キカンセヨ、と」
にいっ、と大きく笑みを形どる黒い唇。
俺は小さな声でカイに呟く。
「――強いぞ、アレ。見た目は愉快だけど」
「分かってる。ここ一帯が奴の結界の中みたいだしね」
どうやら、カイも気付いていたらしい。
だからと言って、事態が好転する要素は一つもないのだが。
「あれ、魔族じゃん?どーするよ?」
「決まってるでしょ。私はルカを送り届けにゃいかんのだから」
「頼んでないって」
「とにかく!」
言って、カイが疾る。
ピエロに向かって。
――勝てるのか・・?俺たちで?
俺は、急ぎ印を結びつつ、既に小さくなったカイの背中を見つめる。
顎を、雫が濡らして行くのを、嫌と言うほど鮮明に感じていた――。
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