桃屋の創作テキスト置き場
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■BGM PROLOGUE 1■
俺は奴を追っていた。
「だからどーした」とか、「あっそう」とか言われちゃうと、話が続かなくなるので却下ね。
夜も更けてきた。ここは森の中である。
そうそうこの追いかけっこを長引かせる訳には行かないのだ。
どこぞの野党の群れに、この俺が見付かってしまったら・・・・
―――考えただけで寒気が走るわい!!
そう、小柄な身体つきに、年よりは幼く見られがちな顔。栗色のみつあみをたなびかせて走る俺。
野党の様なごろつき連中には、格好の「上玉」である。
俗に言う、「可愛い」タイプなのだ。
とても不本意ではあるが、事実なので致し方ない。
しかも、不幸な事に、この辺り一帯は、例によってごろつき共の巣になっているらしい。
そんな危険な森からは、一刻も早く抜け出したい所なのだが。
「・・・くっそー、見付からん」
声を殺し、足音を忍ばせつつも、イライラした俺はついグチをこぼす。
そう遠くへは行っていないはずだ。
奴を見付けられないと、俺は死活問題なのだ。
瞬間―――
ガサっ、と向かいの茂みが微かにゆれる。
「そこかあああああっ!!」
叫んで一気に身を躍らせる。
腰に仕込んだ短剣を抜き放ち、茂みに向かって一気に放つ!
ザシュ!
よっしゃ!手応えアリ!
これで、俺の命は繋がれた。
やっと、やっと奴を仕留めたのだ。
「どーれどれ」
顔がにやけるのを抑え切れず、颯爽と茂みに向かう。
―が、
「ふざけんじゃねえ!このアマ!!」
「え゛!?」
俺は何がなんだか分からず、抗議の声をあげる暇こそすら無く。
茂みの奥から現れた、屈強な男の拳で、俺は宙を舞っていた。
「なっ、な!?」
なんで茂みの中に野党が!?
よくよく目を凝らしてみれば、俺の放ったナイフは、一人の野党の肩にしっかり刺さってる。
うわっ・・・・ちっくしょー、奴を取り逃がした所か、一番会いたくない相手に出くわしてしまった。
俺は内心ほぞを噛む。
焦る気持ちばかりが先走って、目標の「気」すら見失っていたのだ。
しかし、となると俺が追っていた奴は―――
「あああああああ!!」
茂みの奥から出てきた野党の手にぶら下がっている、一羽の野うさぎ。
「俺の晩飯が―――!!」
・・・・・・意地汚いと言う無かれ。
育ち盛りの俺としては、丸々一日飯にありつけなかったのだ。金がなくて(涙)
野うさぎ一羽とて、貴重な食料なのである。
「てめーら、よくも俺のウサコを―――!!」
殴られた左のほっぺたさすりつつ、野党共に向かってびしいっ!と指を刺す。
「へっ、このチビ何訳のわからねー事抜かしてやがんだ?」
「この傷の例はしっかりとさせてもらうぜ」
そう言って、バラバラと出てくる野党たち。
その数、ざっと二十人・・・。
はっきり言おう。
二十人如きである。俺の魔術にかかればこんな数・・・・
こんな数・・・・
―――無理だ―――
今の俺は空腹で、火炎球一発くらいしか出せそうに無い。
よしんば、奴らのど真ん中に命中したとて、一気に全員を叩くのは無理である。
しかし、剣術には心得の乏しい俺としては、剣でこの大男共に勝つ術は無い。
い・・・いきなりピンチ!
全身が冷や汗で覆われる。
仕方なく、最後の力振り絞り、印を結び始めるが、野党の一人がぽつりと、
「・・・おい、コイツ結構可愛い顔してるじゃねーか」
と抜かしやがった。
ホラ来た!来たよ全く!!
可愛い子見るとすぐコレだ!俺は不本意極まりないとゆーのに。
「このまま殺しちまうには、ちょいとばかり勿体ねー気もするなあ」
ギトギトに禿げ上がった頭の野党その一は、いやらしい笑みを浮かべる。
「おい、コイツには身体で払ってもらおうぜ!」
野党その一の意見に、そのニが賛同する。
まて―――!!じょーだんじゃね――――!!
俺にそんな趣味はねえ――!!
結んでた印を完成させ、一気に奴らのど真ん中に放つ!
「ぎゃああああ!」
悲鳴が、辺りにこだまする。
―が、今の一撃だけでは到底倒しきれていない!
となれば、この煙に紛れて逃げるのみ。
「あ、待ちやがれ!」
と言われて待つ馬鹿が居たら、見てみたいモンである。
力の限り俺は疾走する。
が、大男たちの足は以外に速く、俺はあっと言う間に囲まれてしまう。
「どちくしょー!」
逃げ場が無くなった俺は、考えもなしに手近にあった一本の木によじ登る。
「バカめ、逃げ道がないぜ」
あざけ笑いながら、後ろをついて登ってくる野党その一。
心許ない枝を伝っててっぺんまで辿り着き、何とか残った力で空中浮遊の印を結び始める。
しかし。
俺が思ったよりも枝が弱かったのか、はたまた俺が重かったのか。
足場にしていた枝が、ぽっくりと折れた。
「うそ――!!」
泣き叫びつつ、地面にまっ逆さま。
・・・・・あー、俺ここで死ぬんだ・・・・さよならかーちゃん・・・
ありがと・・産んでくれて・・とうちゃーん・・・
錯乱したまま、よく分からないこの世の最後を親に告げ、
眼前まで迫った地面に、諦めて目を閉じる。
もーすぐガツンってゆーしょーげきが・・
しょーげきが・・・・
ふわり。
しょーげきが。
しない。
何か、やわっこいものの包まれてる気分。
あー、そうか。一気に死ぬと、痛みすらないんだなあ・・・。
とか思って俺はそっと目を開く。
きっとそこには、お花畑が・・・
お花畑が、無い。
「・・・・・・・・へ?」
俺の視界に飛び込んできたのは、風になびくブロンド。
なにこれ?
状況が理解出来ず、しぱしぱと瞬きを繰り返す。
ようやっと、俺は事態を把握する。
風にたなびくブロンドの長髪。
恐らく、にっこりと微笑んでやれば、世の女はコロリと落ちそうな程の端整な顔立ち。
そして、ターコイズブルーの双眼。
落下してくる俺を、衝撃の少なくなるように空中で受け止め、優しく着地してくれた彼。
そのブロンドの男は、俺に小さく一つ微笑むと、そっと俺を地面に降ろし、
俺と野党の間に立った。
俺は俗に言う「守られているお姫様」状態である。
―――って事は・・・?
この兄ちゃん、助けてくれる気なのかしら・・・?
「・・・止めた方が良いんでない?相手、軽く2ダース以上いるぜ?」
俺は兄ちゃんの背後から呟く。
しかし、その呟きに兄ちゃんは一瞥もくれず。
「こんな女の子一人に、随分と大層なお相手だな」
凛と通る、男にしては少々高めな声で、彼が吠える。
「どこの馬の骨かしらねえが、すっこんでな!」
「なめやがって!俺たちはそのおじょーちゃんに用があるんだ!」
いつも通り、記憶してる単語数の著しく少ない野党が、お決まりの台詞を吐く。
しかし頭は悪いが、コイツら数が数である。
兄ちゃん一人でやり合うつもりならば、並の剣士ならば唯では済まない。
―が、この兄ちゃん、事態が分かっているのか否か。
「―――やーれやれ。口で言っても分からん悪い子にはオシオキだな」
聞き様によっては、どこかキモイ台詞を吐きつつ、すらり、と腰の剣を抜く。
「ちくしょう、やっちまえ!!」
―――かくして。
兄ちゃん対野党共の戦いの火蓋が、切って落とされたのだった。
そして―――
戦いの幕は、実にあっっっさりと引かれた。
ちょいと目をやれば、累々たる野党共の死体・・・・あ、呻いてる。まだ生きてるらしい。
もはや、「強い」としか形容出来ない自分が、実にもどかしいのだが。
この兄ちゃんの動きは、圧倒の一言だった。
野党の一吠えと共に、飛び出してきた四人を横凪ぎに一閃する。
そのまま一足飛びに踏み込んで、五人目。
返す刀で一人、また一人。
そのまま上体を捻らせ、背後に迫った一人を逆袈裟。
受身を取って地面を転がり、その足で下から切り上げる!
――以下略――
・・・と言うか、見えなかったのだ。ここまでしか。
もはや尋常な速さではない。
その間俺は、ただただぽーっと、兄ちゃんの勇姿を眺めていただけだった。
・・・・楽チンである。
意識を戻すと、兄ちゃんは剣を鞘に収め、こちらへ歩いて来ていた。
「大丈夫だった?」
汗の珠一つ浮いちゃいない顔で、優しく俺を見つめる。
・・・・綺麗な色してるなあ・・・
俺は差し伸べられた手を取る事すら忘れ、相手にもかまけず、その透明なターコイズブルーに魅入っていた。
「・・・・・・あの、顔に何かついてたりします?」
訝しげな顔で尋ねる兄ちゃん。
「え、ええ?いや、そのえっと・・・」
いきなり彼の声で現実に引き戻され、しどろもどろになる。
「――大丈夫・・?」
心配げな顔で俺を覗き込み、そっと、頬に手を伸ばす。
え、え??何!?
右のほっぺに、あったかくて柔らかい感触。
「かわいそうに」
兄ちゃんが俺のほっぺたをなでなでしながら、沈痛な面持ちで呟く。
いや、何かちょっと・・・これは・・・
恥ずい!!
もかかかかか、と顔を染めた俺に、兄ちゃんは更に一言。
「怖くて腰が抜けてしまったのかな?取り合えず、ここからは離れてどこか―――」
言いつつ、俺の手を取り、立ち上がらせようと引っ張る。
瞬間。
ぐぎゅるりるりる―――。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
我慢の限界を超えた腹の虫が、盛大に自己主張を始めたのだった。
俺は奴を追っていた。
「だからどーした」とか、「あっそう」とか言われちゃうと、話が続かなくなるので却下ね。
夜も更けてきた。ここは森の中である。
そうそうこの追いかけっこを長引かせる訳には行かないのだ。
どこぞの野党の群れに、この俺が見付かってしまったら・・・・
―――考えただけで寒気が走るわい!!
そう、小柄な身体つきに、年よりは幼く見られがちな顔。栗色のみつあみをたなびかせて走る俺。
野党の様なごろつき連中には、格好の「上玉」である。
俗に言う、「可愛い」タイプなのだ。
とても不本意ではあるが、事実なので致し方ない。
しかも、不幸な事に、この辺り一帯は、例によってごろつき共の巣になっているらしい。
そんな危険な森からは、一刻も早く抜け出したい所なのだが。
「・・・くっそー、見付からん」
声を殺し、足音を忍ばせつつも、イライラした俺はついグチをこぼす。
そう遠くへは行っていないはずだ。
奴を見付けられないと、俺は死活問題なのだ。
瞬間―――
ガサっ、と向かいの茂みが微かにゆれる。
「そこかあああああっ!!」
叫んで一気に身を躍らせる。
腰に仕込んだ短剣を抜き放ち、茂みに向かって一気に放つ!
ザシュ!
よっしゃ!手応えアリ!
これで、俺の命は繋がれた。
やっと、やっと奴を仕留めたのだ。
「どーれどれ」
顔がにやけるのを抑え切れず、颯爽と茂みに向かう。
―が、
「ふざけんじゃねえ!このアマ!!」
「え゛!?」
俺は何がなんだか分からず、抗議の声をあげる暇こそすら無く。
茂みの奥から現れた、屈強な男の拳で、俺は宙を舞っていた。
「なっ、な!?」
なんで茂みの中に野党が!?
よくよく目を凝らしてみれば、俺の放ったナイフは、一人の野党の肩にしっかり刺さってる。
うわっ・・・・ちっくしょー、奴を取り逃がした所か、一番会いたくない相手に出くわしてしまった。
俺は内心ほぞを噛む。
焦る気持ちばかりが先走って、目標の「気」すら見失っていたのだ。
しかし、となると俺が追っていた奴は―――
「あああああああ!!」
茂みの奥から出てきた野党の手にぶら下がっている、一羽の野うさぎ。
「俺の晩飯が―――!!」
・・・・・・意地汚いと言う無かれ。
育ち盛りの俺としては、丸々一日飯にありつけなかったのだ。金がなくて(涙)
野うさぎ一羽とて、貴重な食料なのである。
「てめーら、よくも俺のウサコを―――!!」
殴られた左のほっぺたさすりつつ、野党共に向かってびしいっ!と指を刺す。
「へっ、このチビ何訳のわからねー事抜かしてやがんだ?」
「この傷の例はしっかりとさせてもらうぜ」
そう言って、バラバラと出てくる野党たち。
その数、ざっと二十人・・・。
はっきり言おう。
二十人如きである。俺の魔術にかかればこんな数・・・・
こんな数・・・・
―――無理だ―――
今の俺は空腹で、火炎球一発くらいしか出せそうに無い。
よしんば、奴らのど真ん中に命中したとて、一気に全員を叩くのは無理である。
しかし、剣術には心得の乏しい俺としては、剣でこの大男共に勝つ術は無い。
い・・・いきなりピンチ!
全身が冷や汗で覆われる。
仕方なく、最後の力振り絞り、印を結び始めるが、野党の一人がぽつりと、
「・・・おい、コイツ結構可愛い顔してるじゃねーか」
と抜かしやがった。
ホラ来た!来たよ全く!!
可愛い子見るとすぐコレだ!俺は不本意極まりないとゆーのに。
「このまま殺しちまうには、ちょいとばかり勿体ねー気もするなあ」
ギトギトに禿げ上がった頭の野党その一は、いやらしい笑みを浮かべる。
「おい、コイツには身体で払ってもらおうぜ!」
野党その一の意見に、そのニが賛同する。
まて―――!!じょーだんじゃね――――!!
俺にそんな趣味はねえ――!!
結んでた印を完成させ、一気に奴らのど真ん中に放つ!
「ぎゃああああ!」
悲鳴が、辺りにこだまする。
―が、今の一撃だけでは到底倒しきれていない!
となれば、この煙に紛れて逃げるのみ。
「あ、待ちやがれ!」
と言われて待つ馬鹿が居たら、見てみたいモンである。
力の限り俺は疾走する。
が、大男たちの足は以外に速く、俺はあっと言う間に囲まれてしまう。
「どちくしょー!」
逃げ場が無くなった俺は、考えもなしに手近にあった一本の木によじ登る。
「バカめ、逃げ道がないぜ」
あざけ笑いながら、後ろをついて登ってくる野党その一。
心許ない枝を伝っててっぺんまで辿り着き、何とか残った力で空中浮遊の印を結び始める。
しかし。
俺が思ったよりも枝が弱かったのか、はたまた俺が重かったのか。
足場にしていた枝が、ぽっくりと折れた。
「うそ――!!」
泣き叫びつつ、地面にまっ逆さま。
・・・・・あー、俺ここで死ぬんだ・・・・さよならかーちゃん・・・
ありがと・・産んでくれて・・とうちゃーん・・・
錯乱したまま、よく分からないこの世の最後を親に告げ、
眼前まで迫った地面に、諦めて目を閉じる。
もーすぐガツンってゆーしょーげきが・・
しょーげきが・・・・
ふわり。
しょーげきが。
しない。
何か、やわっこいものの包まれてる気分。
あー、そうか。一気に死ぬと、痛みすらないんだなあ・・・。
とか思って俺はそっと目を開く。
きっとそこには、お花畑が・・・
お花畑が、無い。
「・・・・・・・・へ?」
俺の視界に飛び込んできたのは、風になびくブロンド。
なにこれ?
状況が理解出来ず、しぱしぱと瞬きを繰り返す。
ようやっと、俺は事態を把握する。
風にたなびくブロンドの長髪。
恐らく、にっこりと微笑んでやれば、世の女はコロリと落ちそうな程の端整な顔立ち。
そして、ターコイズブルーの双眼。
落下してくる俺を、衝撃の少なくなるように空中で受け止め、優しく着地してくれた彼。
そのブロンドの男は、俺に小さく一つ微笑むと、そっと俺を地面に降ろし、
俺と野党の間に立った。
俺は俗に言う「守られているお姫様」状態である。
―――って事は・・・?
この兄ちゃん、助けてくれる気なのかしら・・・?
「・・・止めた方が良いんでない?相手、軽く2ダース以上いるぜ?」
俺は兄ちゃんの背後から呟く。
しかし、その呟きに兄ちゃんは一瞥もくれず。
「こんな女の子一人に、随分と大層なお相手だな」
凛と通る、男にしては少々高めな声で、彼が吠える。
「どこの馬の骨かしらねえが、すっこんでな!」
「なめやがって!俺たちはそのおじょーちゃんに用があるんだ!」
いつも通り、記憶してる単語数の著しく少ない野党が、お決まりの台詞を吐く。
しかし頭は悪いが、コイツら数が数である。
兄ちゃん一人でやり合うつもりならば、並の剣士ならば唯では済まない。
―が、この兄ちゃん、事態が分かっているのか否か。
「―――やーれやれ。口で言っても分からん悪い子にはオシオキだな」
聞き様によっては、どこかキモイ台詞を吐きつつ、すらり、と腰の剣を抜く。
「ちくしょう、やっちまえ!!」
―――かくして。
兄ちゃん対野党共の戦いの火蓋が、切って落とされたのだった。
そして―――
戦いの幕は、実にあっっっさりと引かれた。
ちょいと目をやれば、累々たる野党共の死体・・・・あ、呻いてる。まだ生きてるらしい。
もはや、「強い」としか形容出来ない自分が、実にもどかしいのだが。
この兄ちゃんの動きは、圧倒の一言だった。
野党の一吠えと共に、飛び出してきた四人を横凪ぎに一閃する。
そのまま一足飛びに踏み込んで、五人目。
返す刀で一人、また一人。
そのまま上体を捻らせ、背後に迫った一人を逆袈裟。
受身を取って地面を転がり、その足で下から切り上げる!
――以下略――
・・・と言うか、見えなかったのだ。ここまでしか。
もはや尋常な速さではない。
その間俺は、ただただぽーっと、兄ちゃんの勇姿を眺めていただけだった。
・・・・楽チンである。
意識を戻すと、兄ちゃんは剣を鞘に収め、こちらへ歩いて来ていた。
「大丈夫だった?」
汗の珠一つ浮いちゃいない顔で、優しく俺を見つめる。
・・・・綺麗な色してるなあ・・・
俺は差し伸べられた手を取る事すら忘れ、相手にもかまけず、その透明なターコイズブルーに魅入っていた。
「・・・・・・あの、顔に何かついてたりします?」
訝しげな顔で尋ねる兄ちゃん。
「え、ええ?いや、そのえっと・・・」
いきなり彼の声で現実に引き戻され、しどろもどろになる。
「――大丈夫・・?」
心配げな顔で俺を覗き込み、そっと、頬に手を伸ばす。
え、え??何!?
右のほっぺに、あったかくて柔らかい感触。
「かわいそうに」
兄ちゃんが俺のほっぺたをなでなでしながら、沈痛な面持ちで呟く。
いや、何かちょっと・・・これは・・・
恥ずい!!
もかかかかか、と顔を染めた俺に、兄ちゃんは更に一言。
「怖くて腰が抜けてしまったのかな?取り合えず、ここからは離れてどこか―――」
言いつつ、俺の手を取り、立ち上がらせようと引っ張る。
瞬間。
ぐぎゅるりるりる―――。
・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
我慢の限界を超えた腹の虫が、盛大に自己主張を始めたのだった。
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