桃屋の創作テキスト置き場
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
■月鬼 第一話 ―三日月夜― ■
生まれたのは、骸の只中だった。
辺り一面の、骸、骸、骸、むくろ、むくろ。
其れ以外に、何も無い、世界。
真暗い闇に、槍状の三日月が怖ろしい程、鋭利に輝く。
俺は裸足だった。
衣も、襤褸切れの様だ。
月明かりで、真暗い闇が、僅かに緩和される。
骸は、赤か、黒か。
其の、何れかの色であった。
血塗れた赤か。
焼け焦げた黒か。
俺もどちらかの色に染まって居るのだろうか。
頬に、ぱさりと一房、髪の毛が落ちる。
そろそろと指で摘んで見る。
赤だろうか。
黒だろうか。
三日月が映し出したのは、自身と同じ、黄金。
◇
轟!
風を斬る音が耳に届くより早く、俺は身を翻す。
僅か間合いの一歩外に、女が居た。
美しい女が。
女の衣は、赤く染まって居た。
地に転がる、骸と同じ、赤だ。
「月鬼・・やはり・・・お前が」
女は悲痛な表情で言う。
俺は『月鬼』言う名前なのだろうか。それとも、
ただ三日月の晩に現れた、ただの鬼なのか。
そこではたと、俺は自身が何者であるかすら知らない事に気付く。
名も、姿も、身分も、
人間であるかさえも。
女は俺の知らぬ俺を知って居る様だった。
「私を殺すか、鬼よ、さあ――」
女は握っていた小柄を落とし、両手を大きく広げる。
「お前が鬼であるのならば、私を殺せ」
美しい女は、其のまま少しずつ俺に近寄って来る。
赤く染まった衣。
流れる黒髪。
この女も、骸と同じ色をして居る。
俺は恐らく常人よりは三倍は長い爪で、女の胸を一突きにする。
赤が飛び散る。
俺自身も、その赤に染まる。
漸く、周りの物全てと同じ色になれて、俺は妙に安堵する。
「―――愚かな」
女がぎりっ、と奥歯を噛み締める。
「其れがお前の答えか!」
何の事だか分からないが、何だか不愉快な気分になる。
俺は女の胸に右腕を突き刺したまま、崩れ行く女の身体を支えて居た。
「愚かな、鬼よ!忘れたか!」
女が吠える。
額に浮かぶ雫は、苦悶の為か。
「私のこの血と引き換えに、私はお前を縛する!そう言った筈だ!忘れたのか!」
女は、何時しか泣いていた。
「忘れたのか!月!」
びくり、と俺の身体が跳ねる。
女、女、女、おんな、おんな、
このおんなは、
そう、この女は、
あやめ―――――
「・・・ああああああああああ!!」
「・・思い出したか・・・でも、もう・・遅い。お前は私の地で・・縛され、眠りに着く・・・」
女はずるずると力を抜きながら、地に落ちて行く。
「あ・・・あ・・・・あ・・や・・・め・・・」
ようやくそれだけを想い出したかの様に、呟く。
女は、微笑んだ。
「お前一人では行かせぬ。共に眠ろう。月鬼よ―――」
其処で俺は、意識を手放した。
生まれたのは、骸の只中だった。
辺り一面の、骸、骸、骸、むくろ、むくろ。
其れ以外に、何も無い、世界。
真暗い闇に、槍状の三日月が怖ろしい程、鋭利に輝く。
俺は裸足だった。
衣も、襤褸切れの様だ。
月明かりで、真暗い闇が、僅かに緩和される。
骸は、赤か、黒か。
其の、何れかの色であった。
血塗れた赤か。
焼け焦げた黒か。
俺もどちらかの色に染まって居るのだろうか。
頬に、ぱさりと一房、髪の毛が落ちる。
そろそろと指で摘んで見る。
赤だろうか。
黒だろうか。
三日月が映し出したのは、自身と同じ、黄金。
◇
轟!
風を斬る音が耳に届くより早く、俺は身を翻す。
僅か間合いの一歩外に、女が居た。
美しい女が。
女の衣は、赤く染まって居た。
地に転がる、骸と同じ、赤だ。
「月鬼・・やはり・・・お前が」
女は悲痛な表情で言う。
俺は『月鬼』言う名前なのだろうか。それとも、
ただ三日月の晩に現れた、ただの鬼なのか。
そこではたと、俺は自身が何者であるかすら知らない事に気付く。
名も、姿も、身分も、
人間であるかさえも。
女は俺の知らぬ俺を知って居る様だった。
「私を殺すか、鬼よ、さあ――」
女は握っていた小柄を落とし、両手を大きく広げる。
「お前が鬼であるのならば、私を殺せ」
美しい女は、其のまま少しずつ俺に近寄って来る。
赤く染まった衣。
流れる黒髪。
この女も、骸と同じ色をして居る。
俺は恐らく常人よりは三倍は長い爪で、女の胸を一突きにする。
赤が飛び散る。
俺自身も、その赤に染まる。
漸く、周りの物全てと同じ色になれて、俺は妙に安堵する。
「―――愚かな」
女がぎりっ、と奥歯を噛み締める。
「其れがお前の答えか!」
何の事だか分からないが、何だか不愉快な気分になる。
俺は女の胸に右腕を突き刺したまま、崩れ行く女の身体を支えて居た。
「愚かな、鬼よ!忘れたか!」
女が吠える。
額に浮かぶ雫は、苦悶の為か。
「私のこの血と引き換えに、私はお前を縛する!そう言った筈だ!忘れたのか!」
女は、何時しか泣いていた。
「忘れたのか!月!」
びくり、と俺の身体が跳ねる。
女、女、女、おんな、おんな、
このおんなは、
そう、この女は、
あやめ―――――
「・・・ああああああああああ!!」
「・・思い出したか・・・でも、もう・・遅い。お前は私の地で・・縛され、眠りに着く・・・」
女はずるずると力を抜きながら、地に落ちて行く。
「あ・・・あ・・・・あ・・や・・・め・・・」
ようやくそれだけを想い出したかの様に、呟く。
女は、微笑んだ。
「お前一人では行かせぬ。共に眠ろう。月鬼よ―――」
其処で俺は、意識を手放した。
PR
Comment
カテゴリー
最新記事
(02/24)
(02/24)
(02/24)
(02/24)
(02/24)
カレンダー
最新コメント
プロフィール
HN:
mamyo
性別:
非公開
ブログ内検索