桃屋の創作テキスト置き場
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■innocence ―漆黒― ■
「ローディア・グランシュス」
これが、あたしの名前。
「白銀の巫女」
それが、あたしの持つもう一つの名前。
婆様に教えられた、もう一つの。
その名前を持つものはは、必ず出会うんだって聞いた。
白銀、癸、黄金、そして、焔に。
それらはこの世界の命運に必要な者達で、白銀が現れたら必ず関わるんだって。
幼かったあたしは、それが一体どういう意味なのか分からずに、でも漠然とした恐怖を感じたのを覚えている。
―――なぜしろがねにだけ、みこがいるの?
そう聞いたあたしに、婆様は悲しそうな瞳をしたまま静かに語ってくれた。
―――それはね、ローディア。白銀と呼ばれし者は、必ず焔に討たれて死ぬからだよ。
「死」と言う言葉だけが、強く響いたのを、あたしは強く記憶している。
消え行く「白銀」に寄り添うのが、白銀の巫女なのだと。
―――あたしも死んじゃうの?
―――それは、お前がその時決める事さ
白銀と共に滅ぶか、
白銀を見届けるか。
―――いずれにせよ、辛い選択に違いは無いね。
そう呟いて、愛おしそうにあたしの頭を撫でる婆様の皺だらけの手は、微かに震えていた―――
◇
「白銀は、魔の器だ」
暗くなり始めた空の下、いつになく真面目な顔をしたケインが口を開く。
街灯も無いこの場所では、既に少し先ですらも影が落ちて、目視しにくくなって来ている。
あたしは静かに口の中で印を結ぶと、集めた枝に炎の術をかける。
まばゆい光が一瞬輝いた後、枝はぱちぱちと音を立てて燃え出した。
「俺はツテがあって、ある国の機密事項を把握してるんだ。その国で調べられるだけ調べた結果、出たのがその答えだ」
「・・・器?」
あたしは眉を潜める。
あたしが聞いたのは、白銀は覚醒すると魔族になると言う話だった。
そう告げると、ケインは「それも近いと言えば近い表現なんだけどね」と続ける。
「伝聞なんかでは、地域によって差異はあれど、おおよそそんな感じだ。でも、本当は少し違う。覚醒したら、魔族になるんじゃない。覚醒したら、ただ、無になる」
「無・・?消えてしまうとでも言うの・・・?」
問いかけるあたしの声は、震えては居なかっただろうか。
「消えるんでも無い、ただの『無』だ。消えもしない、現れもしない、ただの無。そしてその『無』の器に、魔族が憑く」
「身体を乗っ取るって、事ね」
「簡単に言えばね」
そこまで語って、沈黙した。
どういう事?
シリウスが『覚醒』して、『無』になる。
『無』になるとは、どういう意味なのだろう。
『無』は『無』であって、存在も具現もしない筈なのだが―――
もしくは、
あたしは、自分で至った考えに、背筋が凍った。
もしくは、
彼を媒体にして、虚無が広がるとでも言うのか。
虚無が広がると言う表現はおかしいけれど、あたしは他に適切な表現方法を知らない。
覚醒した白銀に虚無が収束し、彼を礎に、飲み込む。
そう、全てを。
しかし、もしそうだとしたら。
魔族なんか、添え物に過ぎないのではないだろうか。
彼が覚醒しなければ、彼が暴走しなければ。
それは、食い止められるんじゃないだろうか。
「残念な事に」
あたしの思考を遮って、ケインが口を開く。
「今回の『白銀』に関わるべきの黄金は、まだこの世に生を受けていないらしい。最も、黄金は必ずしも毎回白銀と共に在る訳でもないらしいけど」
白銀について、過去記されたわずかな記録にも、白銀が出現した際に、焔と癸は欠けた事は無いが、黄金に関しては、必ずしもそうではなかったとか。
「黄金は一体、何をすべき者なの?」
白銀の巫女であるあたしは、白銀に寄り添う者。最期を看取る者。
癸であるケインは、全てを見届ける者。
まだ見つかっていない焔は、唯一、白銀を葬れる者。
じゃあ黄金は?
あたしはその答えを知らない。
「黄金はね、再生だよ」
ケインが淡々と語る。
魔族に祝福を受け、覚醒と暴走を約束された白銀。
赤龍神・フォレディグスタンの加護を受けた焔。
青龍神・ディズアラグーシャの加護を受けた癸。
そして。
神族に祝福を受け、全てを浄化、再生させる能力を授かった、黄金。
そこまで聞いて、一気にのどが渇く。
だとしたら?
だとしたら―――
「じゃあ、黄金が居ない今、もし・・・もし・・・」
もし、シリウスが覚醒して、白銀になってしまったら?
「簡単な事だ。焔が覚醒した白銀を殺さない限り、この世界の終わりだ」
淡々と語るケインの瞳は、見た事も無い苦渋で満ちていた。
「ローディア・グランシュス」
これが、あたしの名前。
「白銀の巫女」
それが、あたしの持つもう一つの名前。
婆様に教えられた、もう一つの。
その名前を持つものはは、必ず出会うんだって聞いた。
白銀、癸、黄金、そして、焔に。
それらはこの世界の命運に必要な者達で、白銀が現れたら必ず関わるんだって。
幼かったあたしは、それが一体どういう意味なのか分からずに、でも漠然とした恐怖を感じたのを覚えている。
―――なぜしろがねにだけ、みこがいるの?
そう聞いたあたしに、婆様は悲しそうな瞳をしたまま静かに語ってくれた。
―――それはね、ローディア。白銀と呼ばれし者は、必ず焔に討たれて死ぬからだよ。
「死」と言う言葉だけが、強く響いたのを、あたしは強く記憶している。
消え行く「白銀」に寄り添うのが、白銀の巫女なのだと。
―――あたしも死んじゃうの?
―――それは、お前がその時決める事さ
白銀と共に滅ぶか、
白銀を見届けるか。
―――いずれにせよ、辛い選択に違いは無いね。
そう呟いて、愛おしそうにあたしの頭を撫でる婆様の皺だらけの手は、微かに震えていた―――
◇
「白銀は、魔の器だ」
暗くなり始めた空の下、いつになく真面目な顔をしたケインが口を開く。
街灯も無いこの場所では、既に少し先ですらも影が落ちて、目視しにくくなって来ている。
あたしは静かに口の中で印を結ぶと、集めた枝に炎の術をかける。
まばゆい光が一瞬輝いた後、枝はぱちぱちと音を立てて燃え出した。
「俺はツテがあって、ある国の機密事項を把握してるんだ。その国で調べられるだけ調べた結果、出たのがその答えだ」
「・・・器?」
あたしは眉を潜める。
あたしが聞いたのは、白銀は覚醒すると魔族になると言う話だった。
そう告げると、ケインは「それも近いと言えば近い表現なんだけどね」と続ける。
「伝聞なんかでは、地域によって差異はあれど、おおよそそんな感じだ。でも、本当は少し違う。覚醒したら、魔族になるんじゃない。覚醒したら、ただ、無になる」
「無・・?消えてしまうとでも言うの・・・?」
問いかけるあたしの声は、震えては居なかっただろうか。
「消えるんでも無い、ただの『無』だ。消えもしない、現れもしない、ただの無。そしてその『無』の器に、魔族が憑く」
「身体を乗っ取るって、事ね」
「簡単に言えばね」
そこまで語って、沈黙した。
どういう事?
シリウスが『覚醒』して、『無』になる。
『無』になるとは、どういう意味なのだろう。
『無』は『無』であって、存在も具現もしない筈なのだが―――
もしくは、
あたしは、自分で至った考えに、背筋が凍った。
もしくは、
彼を媒体にして、虚無が広がるとでも言うのか。
虚無が広がると言う表現はおかしいけれど、あたしは他に適切な表現方法を知らない。
覚醒した白銀に虚無が収束し、彼を礎に、飲み込む。
そう、全てを。
しかし、もしそうだとしたら。
魔族なんか、添え物に過ぎないのではないだろうか。
彼が覚醒しなければ、彼が暴走しなければ。
それは、食い止められるんじゃないだろうか。
「残念な事に」
あたしの思考を遮って、ケインが口を開く。
「今回の『白銀』に関わるべきの黄金は、まだこの世に生を受けていないらしい。最も、黄金は必ずしも毎回白銀と共に在る訳でもないらしいけど」
白銀について、過去記されたわずかな記録にも、白銀が出現した際に、焔と癸は欠けた事は無いが、黄金に関しては、必ずしもそうではなかったとか。
「黄金は一体、何をすべき者なの?」
白銀の巫女であるあたしは、白銀に寄り添う者。最期を看取る者。
癸であるケインは、全てを見届ける者。
まだ見つかっていない焔は、唯一、白銀を葬れる者。
じゃあ黄金は?
あたしはその答えを知らない。
「黄金はね、再生だよ」
ケインが淡々と語る。
魔族に祝福を受け、覚醒と暴走を約束された白銀。
赤龍神・フォレディグスタンの加護を受けた焔。
青龍神・ディズアラグーシャの加護を受けた癸。
そして。
神族に祝福を受け、全てを浄化、再生させる能力を授かった、黄金。
そこまで聞いて、一気にのどが渇く。
だとしたら?
だとしたら―――
「じゃあ、黄金が居ない今、もし・・・もし・・・」
もし、シリウスが覚醒して、白銀になってしまったら?
「簡単な事だ。焔が覚醒した白銀を殺さない限り、この世界の終わりだ」
淡々と語るケインの瞳は、見た事も無い苦渋で満ちていた。
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