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桃屋の創作テキスト置き場
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■こんぺいとう5  ウェディング!! 5 ■




「おはよーござーまーす」
「はよーす」


 いつもの感じで、徐々に集まってきたメンバー達。
 実力派女優と、売れっ子演出家の結婚式は、さながら業界のパーティーのような顔ぶれである。

 所謂一種の社交界的な要素も多く含んだこの場で、皆、個々に挨拶周りやら、久々に合う俳優仲間に近況報告やらなにやらで、忙しい。
 披露宴の受付が始まり、会場に通される。
 流石一流ホテルの一番良い宴会場なだけ、広さも何もかも申し分ない。
 当然、報道陣やらも控えており、お呼ばれした人間達は、半分仕事のようなものでもあるのだ。
 今時珍しく、中継が入る結婚式なので、その規模もでかい。
 メイクと着替えを終わらせて、ようやく部屋から出た輝愛だったが、その辺り一面の、一種異様さに気おされていた。
「か・・・帰りたいんですけど」
「大丈夫よ、誰も取って食ったりしないわよ」

 ・・・多分ね。

 へこたれる輝愛に微笑み、珠子は心の中だけで付け加える。

「最近ちかちゃん、暴走気味だものねえ。それよりも茜ちゃんも気になるところだし、まあここは安パイの大ちゃんと一緒がいいかなあ」
 ぽそぽそと、輝愛の横で呟く珠子に、当の本人の輝愛は首をかしげる。
「あんぱいって、何ですか?」
「ん?安全な牌ってことよ。牌ってのは、マージャンの牌ね」
 思わず苦笑しながら答えると、珠子は目ざとく、ようやくラウンジから戻ってきた旦那を見つける。
「紅ちゃーん、遅い遅ーい」
「悪い」
 深紅のロングドレスに、ピンヒールを物ともせず、旦那の下へ駆け寄る珠子。
「た、たまこさーん」
 慣れないヒールにふら付きつつ、輝愛も何とかその後を追う。

 ・・ひー、この靴走りにくいよー。

 若干よろよろしつつも、チームメンバーが固まっている場所までたどり着き、挨拶をする。
「お、おはようございます」
「おはよ・・って、あれ、輝愛ちゃん?」
「うわーマジで!変わるもんだなー」
 誉めているのか居ないのか、勇也と修太郎が目を見開く。
「変ですか?」
「んにゃ、かわゆいかわゆい」
「うん。可愛い」
 勇也は、珍しくふわふわに巻かれておろされている輝愛の髪の毛を、珍しそうに眺め、
「そーゆーのもいいんじゃん?たまには」
「はあ、だと良いんですが」
「まあ、珠子さんがやりそうな事だよな。ってか、多分普通に男ウケよさげな予感」
 修太郎は、いわゆるお嬢様テイストに仕上げられた輝愛を見て、感嘆ともなんともいい難いため息をつく。
「珠子さんのツボ、ドストライクの仕上がりだもんな」
 要するに、ふりふり、ふわふわ、もこもこ。可愛いものをこよなく愛する珠子の手にかかり、輝愛も髪の毛は巻かれてふわふわ、メイクも清純お嬢様テイストに仕上げられている。
 その上、普段絶対着る機会の無いような、シックなブルーグリーンのドレスに身を包んでおり、いつものジャージと、行き帰りのカジュアルなデニム姿位しか見た事のないメンバーにとっては、目の前の輝愛はある種珍しくて仕方ない出で立ちなのだ。

「お疲れ、珠子。悪いな」
「ちかちゃん、それよりどうよこの出来!このあたしの好みどんぴしゃ!可愛いでしょ可愛いでしょ!!」
 紅龍より遅れて到着した千影は、珠子に声をかけるや否や、興奮気味の彼女に引っ張られる。
「ほら、輝愛ちゃん、おいで」
 輝愛も珠子にひっぱられ、ヒールでよろけつつ、ついてゆく。
「ほら、どうよ。素敵でしょ?可愛いでしょ?食っちゃだめよ?」
「・・・・食うか、こんなとこで」
 呆れて答える千影に、珠子はにやりといつもの悪い笑顔を浮かべ、
「こんなとこじなきゃ、食っちゃう気なのね。あらやーだー怖いこわーい」
「珠子さん、何言ってるんですか!輝愛ちゃんに失礼でしょ!」
 ようやく割って入ってきた茜が、物凄い剣幕で珠子をまくし立てる。
「あらら茜ちゃん、先にご挨拶でしょ?お・は・よ・う」
「おは、おはようございマス・・」

 意地悪珠子にかかっては、後輩なんぞは思うままである。

「で、輝愛ちゃん見た?どう?惚れ直したでしょ」
「お・・おかげさまで・・」
 顔を赤く染めて口ごもる茜を、にやけて嬉しそうに眺める悪徳珠子。
「そんくらいで止めといてあげてくださいよ、茜くんが地味に哀れなんで」
 苦笑しつつ珠子を止めに入る大輔。
 チームメンバーの中で唯一の和装である。
 最も、チームに所属してはいるものの、本業は日本舞踊であり、茶道やら華道やら、和に精通しているお家柄なので、紋付袴もしっくりきている。
 地味に哀れと言われた山下茜は、肩につく長さの髪の毛をいつもの様に後ろで束ね、ダークグレーのスーツを着ている。
「そろそろ行くか」
 社長が、まとまりそうもない団員達を眺めて肩を落とす。
 このまま放って置けば、披露宴が終了するまでこのままここで何だかんだとやっていそうな勢いだったからだ。

「あ、カワハシ・・」
「ん?」

 遠慮がちにかけられた声に振り向く千影。
 その視線の先には、ヒールのおかげで若干いつもより背の高くなった、娘分。
「あのね、あたしお金もってきてなくて・・」
「へ?何で?金お前いらないだろ」
「でも、お祝いで包むお金・・・」
 その事かとようやく的を射たりな表情をして、
「まとめて二人分包んであるから、心配すんな」
 と、ふわふわ巻き毛になった娘分の頭に手を伸ばしかけて、やめた。
「?」
 首をかしげる輝愛に、
「いや、せっかくのくるくる、崩れたら勿体無いしな」
 そう言うと、千影はさっさと受付に向かってしまった。


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