桃屋の創作テキスト置き場
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■こんぺいとう5 ウェディング!! 4 ■
「あら、思ったより余裕な時間で登場ね」
ホテルに到着し、車を地下の駐車場に預け、またまた輝愛と自分の荷物と、追加さっき購入したフルセットを抱えて、千影は珠子の待つ部屋へ向かった。
結構な勢いで珠子からメールで指定された部屋へ向かうと、丁度良く珠子と紅龍が立っているのが見えた。
「悪い、本気で頭から全部頼むわ」
言うが早いか、千影は珠子に、例のフルセットの紙袋を手渡すと、両膝に手をついて、大きくため息をつく。
「あらあら、お疲れねちかちゃん。時間あるから大丈夫よ」
クスクス笑う珠子は、既に深紅のドレスに身を包んでいる。
「おはよう、輝愛ちゃん。いきなりでびっくりしたよね」
それこそ本当の保護者の様な顔で、紅龍が輝愛に苦笑する。
「未だに脳みそ追いついてないですよぅ」
情けない声で、千影に小脇に抱えられたまましょぼくれる輝愛に、紅龍は再び苦笑しながら、
「まあ、珠子とちかのためにちょっと我慢してあげて」
「はあ」
「うちのかみさん、輝愛ちゃんをメイクできるの、喜んでたからさ」
「・・・恐れ入ります」
この場合の『恐れ入る』は、それこそ色んな意味での『恐れ入る』な訳だ。
「まあ、あの魔女みたいな顔で乙女回路搭載されちゃってるからさ、我慢してやって」
「をとめかいろ・・・」
素面でやたら素敵指数の高い台詞を吐くあたり、やはり社長は社長だなあと、輝愛は改めて実感する。
しっかし、あたしには搭載されてなさげだなあ、をとめかいろ・・・・
思案する輝愛の腕に、魔女珠子はそれこそ嬉しそうに手を添えると、
「で?いつまでいるわけ?覗く気?着替えを?このうら若き乙女の着替えを?返答次第ではあっさり殺すわよ?」
と、嫌みったらしく目の前の男二人に言い放つ。
旦那は心得たもので、
「お前で見飽きてるからいい」
と言うが早いか、背を向けてロビーラウンジのある方向に歩き出す。
「で?ちかちゃんは?」
半眼で見据えられると、いささか寝癖の残った髪の毛をくしゃりとやると、
「心の底から遠慮致します」
と息を吐くと、「俺も着替えなきゃいけねーなあ」などと呟きつつ、紅龍が歩く後ろを面倒くさそうについて行った。
「輝愛ちゃん、べっぴんさんにしたげるからね!」
「恐れ入ります」
紙袋抱えて、お辞儀をする彼女に、すっかり母親だか姉だか気分の珠子は微笑む。
輝愛の言う「恐れ入ります」は、それこそ色んな意味での「恐れ入る」である。
室内に入り、紙袋を置くと、珠子に促された椅子に腰掛ける。
珠子は珠子で、早速千影の戦利品の物色を始めたかと思うと、ドレスをハンガーにかけ、小物類のパッケージやらをひっぺがし、鏡の傍にある小さめのテーブルに鎮座させていった。
そして、自分の荷物の中からメイクボックスを引っ張り出し、たんたんっと軽い音を立てて、小瓶などを並べていく。
「軽くパックしましょか」
「はあ」
されるがままになっている輝愛は、取り合えず前髪を七三のようにピンでとめ、額を全開にされたかと思うと、使いきりタイプの美容液パックを顔に乗せられ、会話が難しい状態にさせられる。
「時間少ないから、じっくりやってあげられないのが残念だけどね、やるとやらないとじゃ、出来が違うのよ~」
珠子は嬉しそうに微笑みながら、ジェイソン状態になった輝愛の横で、支度をしている。
その珠子をこっそり眺めつつ、輝愛は小さく気づかれないようにため息をついた。
・・・お葬式にしか、縁が無かったからなぁ・・・
彼女の両親は、彼女が2歳の頃、自動車事故で亡くなっている。
そのときの葬儀の様子は、ほとんど覚えてなどいないけれど、大好きなばあちゃんが泣いて、泣いて、泣いてたのだけは覚えてた。
そのあとちょっとして、ずっと具合の良くなかったじいちゃんが亡くなって。
それで、最後はばあちゃんだ。
結婚式には縁がなかったけれども、今までの人生でお葬式には縁があった。
『見送る側の人間』なんて、言われた事もあったっけ。
そう言う運命の人間なんだって。
それがかなりショックだったりもしたな。
結婚式って、どんな空気なんだろう・・・
「輝愛ちゃん?」
不安げな顔で覗き込まれて、はっとする。
「どしたの?具合での悪い?」
「あ、違います、ぼーっとしちゃって。大丈夫です」
「そお・・?」
「はい、これ、はじめてマスクしました。ひやひやできもちくて、寝そうになりました」
えへへへと、申し訳なそうに笑う輝愛に、珠子はそれ以上問いはしなかった。
「お化粧、しよっか。ちかちゃんがびっくりするくらい、綺麗にしちゃおうね」
微笑む珠子に、輝愛も眉尻を下げて頷いた。
「あら、思ったより余裕な時間で登場ね」
ホテルに到着し、車を地下の駐車場に預け、またまた輝愛と自分の荷物と、追加さっき購入したフルセットを抱えて、千影は珠子の待つ部屋へ向かった。
結構な勢いで珠子からメールで指定された部屋へ向かうと、丁度良く珠子と紅龍が立っているのが見えた。
「悪い、本気で頭から全部頼むわ」
言うが早いか、千影は珠子に、例のフルセットの紙袋を手渡すと、両膝に手をついて、大きくため息をつく。
「あらあら、お疲れねちかちゃん。時間あるから大丈夫よ」
クスクス笑う珠子は、既に深紅のドレスに身を包んでいる。
「おはよう、輝愛ちゃん。いきなりでびっくりしたよね」
それこそ本当の保護者の様な顔で、紅龍が輝愛に苦笑する。
「未だに脳みそ追いついてないですよぅ」
情けない声で、千影に小脇に抱えられたまましょぼくれる輝愛に、紅龍は再び苦笑しながら、
「まあ、珠子とちかのためにちょっと我慢してあげて」
「はあ」
「うちのかみさん、輝愛ちゃんをメイクできるの、喜んでたからさ」
「・・・恐れ入ります」
この場合の『恐れ入る』は、それこそ色んな意味での『恐れ入る』な訳だ。
「まあ、あの魔女みたいな顔で乙女回路搭載されちゃってるからさ、我慢してやって」
「をとめかいろ・・・」
素面でやたら素敵指数の高い台詞を吐くあたり、やはり社長は社長だなあと、輝愛は改めて実感する。
しっかし、あたしには搭載されてなさげだなあ、をとめかいろ・・・・
思案する輝愛の腕に、魔女珠子はそれこそ嬉しそうに手を添えると、
「で?いつまでいるわけ?覗く気?着替えを?このうら若き乙女の着替えを?返答次第ではあっさり殺すわよ?」
と、嫌みったらしく目の前の男二人に言い放つ。
旦那は心得たもので、
「お前で見飽きてるからいい」
と言うが早いか、背を向けてロビーラウンジのある方向に歩き出す。
「で?ちかちゃんは?」
半眼で見据えられると、いささか寝癖の残った髪の毛をくしゃりとやると、
「心の底から遠慮致します」
と息を吐くと、「俺も着替えなきゃいけねーなあ」などと呟きつつ、紅龍が歩く後ろを面倒くさそうについて行った。
「輝愛ちゃん、べっぴんさんにしたげるからね!」
「恐れ入ります」
紙袋抱えて、お辞儀をする彼女に、すっかり母親だか姉だか気分の珠子は微笑む。
輝愛の言う「恐れ入ります」は、それこそ色んな意味での「恐れ入る」である。
室内に入り、紙袋を置くと、珠子に促された椅子に腰掛ける。
珠子は珠子で、早速千影の戦利品の物色を始めたかと思うと、ドレスをハンガーにかけ、小物類のパッケージやらをひっぺがし、鏡の傍にある小さめのテーブルに鎮座させていった。
そして、自分の荷物の中からメイクボックスを引っ張り出し、たんたんっと軽い音を立てて、小瓶などを並べていく。
「軽くパックしましょか」
「はあ」
されるがままになっている輝愛は、取り合えず前髪を七三のようにピンでとめ、額を全開にされたかと思うと、使いきりタイプの美容液パックを顔に乗せられ、会話が難しい状態にさせられる。
「時間少ないから、じっくりやってあげられないのが残念だけどね、やるとやらないとじゃ、出来が違うのよ~」
珠子は嬉しそうに微笑みながら、ジェイソン状態になった輝愛の横で、支度をしている。
その珠子をこっそり眺めつつ、輝愛は小さく気づかれないようにため息をついた。
・・・お葬式にしか、縁が無かったからなぁ・・・
彼女の両親は、彼女が2歳の頃、自動車事故で亡くなっている。
そのときの葬儀の様子は、ほとんど覚えてなどいないけれど、大好きなばあちゃんが泣いて、泣いて、泣いてたのだけは覚えてた。
そのあとちょっとして、ずっと具合の良くなかったじいちゃんが亡くなって。
それで、最後はばあちゃんだ。
結婚式には縁がなかったけれども、今までの人生でお葬式には縁があった。
『見送る側の人間』なんて、言われた事もあったっけ。
そう言う運命の人間なんだって。
それがかなりショックだったりもしたな。
結婚式って、どんな空気なんだろう・・・
「輝愛ちゃん?」
不安げな顔で覗き込まれて、はっとする。
「どしたの?具合での悪い?」
「あ、違います、ぼーっとしちゃって。大丈夫です」
「そお・・?」
「はい、これ、はじめてマスクしました。ひやひやできもちくて、寝そうになりました」
えへへへと、申し訳なそうに笑う輝愛に、珠子はそれ以上問いはしなかった。
「お化粧、しよっか。ちかちゃんがびっくりするくらい、綺麗にしちゃおうね」
微笑む珠子に、輝愛も眉尻を下げて頷いた。
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