桃屋の創作テキスト置き場
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
■こんぺいとう5 ウェディング!! 3 ■
フィッティングルームの前で、千影は頭を抱えていた。
「・・・・・・・・お前さあ」
「はい~」
呼ばれた輝愛も、疲れたような声である。
もう既に、何着目の試着だろうか。
輝愛としては、状況もよく分からず、出来ればとっとと終わらせるか、どちらかと言うとなかったことにして、帰りたいくらいなのだが。
しかし、フィッティングルームの前で待機する、千影のOKが出ないのだ。
「これなんぞいかが」
なかば投げやり気味に、カーテンをシャッ、と開く。
「お前、スカートにあわねぇなあ」
「そんなしみじみ言われても」
半眼で言う彼に、そこまで言われると、若干悲しくなってくるのだが。
「大体、似合わないのばっかり選びすぎ」
と、彼女が適当に選んで試着し、没になった洋服の山を見た。
「だって、スカートなんて、中学の制服でしか着た事ないし・・・」
しょんぼりうなだれる輝愛。
実際なら、高校に通っている年齢ではあるが、千影と出会う前の彼女は、経済的に進学を選ぶ余裕はなかった。
高校で制服着てたら、多少はスカートに抵抗感ないかも知れないけど。
心の中で、ちょっぴり愚痴を零してみたり。
「トーイね、セットアップ似合わねぇな」
「結婚式のお洋服なんか、分かんないよー。いかなくてもいいでしょー」
「だめ。俺が殺される。火あぶりもしくは八つ裂きで」
「うえええ」
二人が、はたから見ると漫才の様な会話を交わしていると、
店員が見かねたのか、声をかける。
「いかがですか?」
「いかがもなんも、だめだそうです」
答える輝愛に、千影は悪びれもせず、
「だって似合わねーんだもん」
店員も苦笑して、
「お肌の色と、お洋服が合ってないご様子でしたので、何着かお持ちしましたよ。あと、お客様の雰囲気ですと、セットアップよりも、こういった感じのものがお似合いになるんじゃないかしら」
千影とおよそ同い年くらいに見える店員の女性は、にっこりと微笑んで、千影にピックアップして来た洋服を差し出す。
どうやら、先ほどからの二人の会話を聞いて、気を利かせてくれたらしい。
「を、これ着て」
渡されたドレスの中から、千影が気に入ったらしい一枚を抜き取る。
「ひ!こんな高いの無理!」
断ろうと、青ざめて店員に差し出すが、千影は聞いていない。
「こちらはお色もシックで上品ですし、ラインも綺麗に出ますよ。お素材も上質なものですし、なにより、お似合いになると思いますけど」
「だそうだ。お似合いになるそうだから、取り合えず着ろ」
「ででででも」
一枚の、ブルーグリーンのドレスを渡されて、冷や汗をたらす輝愛。
・・・・やだよーこんな高いの。払えないよー・・・
「五月蝿い。早くしろ。時間がねえ。それとも」
千影は半眼になって凄むと、輝愛にぐっと顔を近付けて、
「一人で出来ないなら脱がせてやるけど?どうする?」
「ひ、一人で出来ます!!!」
千影の据わった目を本気と取ったのか、青くなったまま大急ぎでカーテンを閉める輝愛。
彼の横では、店員がくすくす笑っている。
「可愛らしい恋人さんですね」
「だといいんですけどね」
と、肩を落として苦笑する。
お洋服に合う小物もお持ちしましょうか
と言う店員の言葉を二つ返事で承諾し、
バックと靴、アクセサリーを一式頼む。
しばらくすると、目の前のカーテンがおずおずと開かれた。
「無理です隊長」
「なんだ隊長って。いいから首から下見せろ」
カーテンから首だけを出して、泣きそうになっている娘分に、情け容赦ない父親分。
「だから無理ですってば!こんなの恥ずかしい!死ねる!」
「死んでも生き返らせてやるから見せろ」
「ひどーい」
半泣きの彼女を無視して、千影はカーテンを開ける。
一瞬、言葉が出なかった。
「とてもお似合いですよ」
店員の言葉で、はっと我に返り、
「さっきのより、大分マシ」
と頷いた。
「ミニスカートいや・・はずかしい・・」
半べそになりながら、ドレスの裾を押さえる娘を無視して、千影は店員に向き直り、何か話している。
輝愛は観念した様に、今着てきた自分の服に着替えるため、本日何回目か分からないくらい開け閉めしたカーテンを、再び閉めた。
娘分が着替えをしている間に、千影は店員が用意してくれた小物類すべてを合わせて、とっとと会計を済ませた。
さすがはデザイナーズブランド。頭の先から足の先まで一箇所で揃ったのは有り難い。
ようやく腕時計に目をやると、時間は何とか間に合いそうだった。
「お待たせ致しました」
「どーもー」
微笑みながら、かなり大きなショッパーを渡された千影は、フィッティングルームから出てきた輝愛を引っつかんで、すたすたと店を出て行く。
「あうー、カワハシー」
「ん?どした?」
殆ど抱えられている状態の輝愛は、なぜかその異様に大きな紙袋を見て、
「・・・・何故にそんなに大きいの・・・そして全部でいくらだったの・・・」
「は?何で?」
きょとんとする彼に、彼女は脅えたように肩をすくませて、
「だって、袋が絶対大きいんだもん・・・」
「ああ、だって一式頭から足まで買ったし」
「全部・・・・・・・・・・」
意識が軽く遠のく位の金額になっていることは明白で、輝愛は青ざめる。
・・・・だって、ドレス一枚であの値段だよ・・?全部って、なにそれいくらたすけて・・・
「ぜんぶでいくらだったの?分割払いとかでいい?一括じゃあたし払えないよぅ・・・」
「値段聞くと、お前泣くかも知んないから、やめとけ」
「ひー」
既に半分以上泣いている娘分を抱えたまま、再び助手席に放り込んで、一路、珠子が待つホテルを目指す。
助手席で死に掛けている娘分に、シートベルトをしてやりながら、
「気にするな。お前の為じゃなくて、ほぼ俺のためなんだから」
「でも、着るのはあたしでしょ?」
不安そうに上目遣いで問い返す。
その仕草が妙に子供っぽくて、千影は苦笑する。
「じゃあ、貢物ってことで」
「はあ?」
「買ってやるって、言ってんの」
エンジンをかけ、駐車場から出ようと、バックミラーとサイドミラーを交互に目で追う千影に、輝愛は首をかしげる。
「なんで?」
「んー、なんでって言われてもなぁ。必要だし」
「でも・・」
買ってもらう理由なんて、ないのに。
そう一人呟いて、シートベルトを握り締める。
その様子を見て、再び苦笑して、彼は左手で優しく彼女の髪の毛を撫でた。
「案外似合うかも知れんぞ」
「まっさか」
答えてため息つく彼女に、心の中だけで言葉を紡ぐ。
必要なのは最もだけど、それ以上に俺が買ってやりたかったんだよ。
だってたまには見たいじゃないか、可愛い娘分の、可愛い姿。
口が裂けても、本人には言えないけど。
未だに妙に遠慮深すぎるこの年頃の娘は、こんな事でもない限り、自分からの贈り物を受け取りはしないかも知れないから。
だとしたら、それを理由に、今までの分ちょっとまとめてしまったって、悪くは無いだろ?
「要するに、俺のためな訳だ」
そう呟きながら、アクセルを踏んだ。
フィッティングルームの前で、千影は頭を抱えていた。
「・・・・・・・・お前さあ」
「はい~」
呼ばれた輝愛も、疲れたような声である。
もう既に、何着目の試着だろうか。
輝愛としては、状況もよく分からず、出来ればとっとと終わらせるか、どちらかと言うとなかったことにして、帰りたいくらいなのだが。
しかし、フィッティングルームの前で待機する、千影のOKが出ないのだ。
「これなんぞいかが」
なかば投げやり気味に、カーテンをシャッ、と開く。
「お前、スカートにあわねぇなあ」
「そんなしみじみ言われても」
半眼で言う彼に、そこまで言われると、若干悲しくなってくるのだが。
「大体、似合わないのばっかり選びすぎ」
と、彼女が適当に選んで試着し、没になった洋服の山を見た。
「だって、スカートなんて、中学の制服でしか着た事ないし・・・」
しょんぼりうなだれる輝愛。
実際なら、高校に通っている年齢ではあるが、千影と出会う前の彼女は、経済的に進学を選ぶ余裕はなかった。
高校で制服着てたら、多少はスカートに抵抗感ないかも知れないけど。
心の中で、ちょっぴり愚痴を零してみたり。
「トーイね、セットアップ似合わねぇな」
「結婚式のお洋服なんか、分かんないよー。いかなくてもいいでしょー」
「だめ。俺が殺される。火あぶりもしくは八つ裂きで」
「うえええ」
二人が、はたから見ると漫才の様な会話を交わしていると、
店員が見かねたのか、声をかける。
「いかがですか?」
「いかがもなんも、だめだそうです」
答える輝愛に、千影は悪びれもせず、
「だって似合わねーんだもん」
店員も苦笑して、
「お肌の色と、お洋服が合ってないご様子でしたので、何着かお持ちしましたよ。あと、お客様の雰囲気ですと、セットアップよりも、こういった感じのものがお似合いになるんじゃないかしら」
千影とおよそ同い年くらいに見える店員の女性は、にっこりと微笑んで、千影にピックアップして来た洋服を差し出す。
どうやら、先ほどからの二人の会話を聞いて、気を利かせてくれたらしい。
「を、これ着て」
渡されたドレスの中から、千影が気に入ったらしい一枚を抜き取る。
「ひ!こんな高いの無理!」
断ろうと、青ざめて店員に差し出すが、千影は聞いていない。
「こちらはお色もシックで上品ですし、ラインも綺麗に出ますよ。お素材も上質なものですし、なにより、お似合いになると思いますけど」
「だそうだ。お似合いになるそうだから、取り合えず着ろ」
「ででででも」
一枚の、ブルーグリーンのドレスを渡されて、冷や汗をたらす輝愛。
・・・・やだよーこんな高いの。払えないよー・・・
「五月蝿い。早くしろ。時間がねえ。それとも」
千影は半眼になって凄むと、輝愛にぐっと顔を近付けて、
「一人で出来ないなら脱がせてやるけど?どうする?」
「ひ、一人で出来ます!!!」
千影の据わった目を本気と取ったのか、青くなったまま大急ぎでカーテンを閉める輝愛。
彼の横では、店員がくすくす笑っている。
「可愛らしい恋人さんですね」
「だといいんですけどね」
と、肩を落として苦笑する。
お洋服に合う小物もお持ちしましょうか
と言う店員の言葉を二つ返事で承諾し、
バックと靴、アクセサリーを一式頼む。
しばらくすると、目の前のカーテンがおずおずと開かれた。
「無理です隊長」
「なんだ隊長って。いいから首から下見せろ」
カーテンから首だけを出して、泣きそうになっている娘分に、情け容赦ない父親分。
「だから無理ですってば!こんなの恥ずかしい!死ねる!」
「死んでも生き返らせてやるから見せろ」
「ひどーい」
半泣きの彼女を無視して、千影はカーテンを開ける。
一瞬、言葉が出なかった。
「とてもお似合いですよ」
店員の言葉で、はっと我に返り、
「さっきのより、大分マシ」
と頷いた。
「ミニスカートいや・・はずかしい・・」
半べそになりながら、ドレスの裾を押さえる娘を無視して、千影は店員に向き直り、何か話している。
輝愛は観念した様に、今着てきた自分の服に着替えるため、本日何回目か分からないくらい開け閉めしたカーテンを、再び閉めた。
娘分が着替えをしている間に、千影は店員が用意してくれた小物類すべてを合わせて、とっとと会計を済ませた。
さすがはデザイナーズブランド。頭の先から足の先まで一箇所で揃ったのは有り難い。
ようやく腕時計に目をやると、時間は何とか間に合いそうだった。
「お待たせ致しました」
「どーもー」
微笑みながら、かなり大きなショッパーを渡された千影は、フィッティングルームから出てきた輝愛を引っつかんで、すたすたと店を出て行く。
「あうー、カワハシー」
「ん?どした?」
殆ど抱えられている状態の輝愛は、なぜかその異様に大きな紙袋を見て、
「・・・・何故にそんなに大きいの・・・そして全部でいくらだったの・・・」
「は?何で?」
きょとんとする彼に、彼女は脅えたように肩をすくませて、
「だって、袋が絶対大きいんだもん・・・」
「ああ、だって一式頭から足まで買ったし」
「全部・・・・・・・・・・」
意識が軽く遠のく位の金額になっていることは明白で、輝愛は青ざめる。
・・・・だって、ドレス一枚であの値段だよ・・?全部って、なにそれいくらたすけて・・・
「ぜんぶでいくらだったの?分割払いとかでいい?一括じゃあたし払えないよぅ・・・」
「値段聞くと、お前泣くかも知んないから、やめとけ」
「ひー」
既に半分以上泣いている娘分を抱えたまま、再び助手席に放り込んで、一路、珠子が待つホテルを目指す。
助手席で死に掛けている娘分に、シートベルトをしてやりながら、
「気にするな。お前の為じゃなくて、ほぼ俺のためなんだから」
「でも、着るのはあたしでしょ?」
不安そうに上目遣いで問い返す。
その仕草が妙に子供っぽくて、千影は苦笑する。
「じゃあ、貢物ってことで」
「はあ?」
「買ってやるって、言ってんの」
エンジンをかけ、駐車場から出ようと、バックミラーとサイドミラーを交互に目で追う千影に、輝愛は首をかしげる。
「なんで?」
「んー、なんでって言われてもなぁ。必要だし」
「でも・・」
買ってもらう理由なんて、ないのに。
そう一人呟いて、シートベルトを握り締める。
その様子を見て、再び苦笑して、彼は左手で優しく彼女の髪の毛を撫でた。
「案外似合うかも知れんぞ」
「まっさか」
答えてため息つく彼女に、心の中だけで言葉を紡ぐ。
必要なのは最もだけど、それ以上に俺が買ってやりたかったんだよ。
だってたまには見たいじゃないか、可愛い娘分の、可愛い姿。
口が裂けても、本人には言えないけど。
未だに妙に遠慮深すぎるこの年頃の娘は、こんな事でもない限り、自分からの贈り物を受け取りはしないかも知れないから。
だとしたら、それを理由に、今までの分ちょっとまとめてしまったって、悪くは無いだろ?
「要するに、俺のためな訳だ」
そう呟きながら、アクセルを踏んだ。
PR
Comment
カテゴリー
最新記事
(02/24)
(02/24)
(02/24)
(02/24)
(02/24)
カレンダー
最新コメント
プロフィール
HN:
mamyo
性別:
非公開
ブログ内検索