桃屋の創作テキスト置き場
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■こんぺいとう5 ウェディング!! 1 ■
「早く起きすぎたかぁ・・・」
とある連休の初日の朝。
公演舞台が終わったばかりで、しばらくの休みだ。
当然、公演以外でも仕事はあるが、今日明日は連休で、久々に惰眠を貪ってやる!
と昨日のうちから息巻いていた千影だったのだが。
ベッドから起き上がり、洗顔を済ませてキッチンへ向かい、素晴らしく丁度いいタイミングで手渡されたコーヒーをすすりながら、千影は一人で呟いた。
「いつもどおりでしょ?」
新聞を、これまた素晴らしいタイミングで手渡しつつ、輝愛が答える。
「いや、せっかくの休みなのに、もうちょっとゆっくりでも良かったなーって」
「でも、お友達の結婚式でしょ」
言われて、はた、とカレンダーに目をやる。
「え・・・・そうだったっけ・・・?」
「ちょっと、カワハシ?」
未だ僅かに寝ぼけ眼をこすりながら、カレンダーに顔を近付ける。
そこには、はっきりくっきりと赤い文字で、『結婚式に無理やり参加させられる』と書いてあった。
「・・・まさかとは思うけど、忘れてたとか言う?」
「聞いて驚け。そのまさかだ」
「もー!」
呆れる輝愛だったが、呼ばれている披露宴の開始時刻は15時なので、別に遅刻しそうな訳でもないのだが。
「あ、スーツださなきゃ」
「昨日カワハシが寝た後に、ちゃんと出しときました」
「祝儀袋とふくさ」
「こないだクローゼットから発掘しときました」
今更言い出す千影に、しかし輝愛は呆れ顔ながらも、準備したものを指差す。
なかなかどうして、大変良くできた娘分のおかげで、特に今から買いに走るものは無さそうだ、と、安堵のため息をつく。
「まったく、たまにちょこっと大胆に抜けてる時あるよね、カワハシ」
「疲れてんの」
悪びれる様子も無い彼に、しかしそれも最もなので、彼女は苦笑するのだった。
「招待状と、ご祝儀袋ね。中身は自分で入れてね。で、ふくさそこね。スーツはそこのハンガーにかけてあるブラックのやつでしょ?で、アイロンかけたワイシャツはそっちのハンガー。何色がいいか分かんなかったからね、色んなの出てるから選んでね。ネクタイは白でいいのかな?他のもそこにかけてあるから。で、靴は磨いといたから玄関に出てるやつね。あとはカワハシの身一つよ」
「誠に有難うございます。お嬢様」
ははあ、と頭を大きく垂れて大袈裟に礼を述べながら、届いてからロクに目も通していなかった招待状を眺める。
本来なら、招待状に同封されているハガキで、出席の有無を通知するのだが、今回に限っては、アクションチームのほぼ全員が『強制参加』状態になっており、有無を言わさず『参加』扱いになると言われていたので、別段、詳しく内容を把握していなかったのだ。
輝愛に限っては、まだ面識がないのと、入団して間もない事もあり、強制参加にはなっていないのだが。
今回の新郎新婦は、千影本人もチーム全体にもとても深く縁のある二人で、新郎は演出家、新婦は女優。
新郎の方は、チームの仕事でも、そのほかの舞台の仕事でも、しょっちゅう顔を合わせる大学時代からの先輩で、新婦のほうも、そこかしこの舞台で見かける実力派であり、業界関係者も注目するカップルの挙式なのである。
「あれま、直筆?」
目を落とした招待状には、今まで気づかなかった、直筆のメッセージが。
呟いて、久しぶりに見る先輩の字を目で追って、
「うげ」
かえるがつぶされたような声を出す。
「ん?どしたの?」
招待状を持ったまま固まってしまった千影を、下から覗き込む輝愛。
「・・・・・トーイ、お前、今日、暇?」
「うん。大掃除しようと思って。丁度いいことに怠け者カワハシが出かけるし」
若干、最後の方に気になる台詞があったが、今の千影にそこを突っ込む余裕は、最早皆無だった。
「今何時!?」
「え?11時ちょっと過ぎたとこ」
答える輝愛の台詞に、千影の顔がさあっ、と青くなって行く。
「取り合えず、着替えろ!即効!」
「へ?え?なんで?」
「いいから早く!!!!」
怒鳴って、自分も大急ぎで先ほど指し示されたスーツ一式などをかばんに詰め込み始める。
「ちょちょちょ、何が起こったの?」
「今からだぞ!?」
「はあ?」
完全に顔色を失って、蒼白になった千影が、若干寝癖の残る頭を抱えながら、
「今から服買って靴買って髪の毛いじってメイクして!?」
「カワハシ化粧するの?」
「馬鹿、仕事でもないのにするかよ」
「じゃあなんで」
圧倒的に、事態を把握する術を与えられないまま圧されまくってる輝愛が、目を見開いて唖然としたまま、何とか口を動かす。
「お前だよ!」
「はあ?」
千影はバッグに整髪料やら財布やら祝儀袋やら、取り合えず突っ込みながら、
「お前も行かなきゃいけなくなったの!」
「どこに」
何でわかんねぇんだこいつ
と言う顔で、千影が怒鳴る。
「結婚式!!!」
「早く起きすぎたかぁ・・・」
とある連休の初日の朝。
公演舞台が終わったばかりで、しばらくの休みだ。
当然、公演以外でも仕事はあるが、今日明日は連休で、久々に惰眠を貪ってやる!
と昨日のうちから息巻いていた千影だったのだが。
ベッドから起き上がり、洗顔を済ませてキッチンへ向かい、素晴らしく丁度いいタイミングで手渡されたコーヒーをすすりながら、千影は一人で呟いた。
「いつもどおりでしょ?」
新聞を、これまた素晴らしいタイミングで手渡しつつ、輝愛が答える。
「いや、せっかくの休みなのに、もうちょっとゆっくりでも良かったなーって」
「でも、お友達の結婚式でしょ」
言われて、はた、とカレンダーに目をやる。
「え・・・・そうだったっけ・・・?」
「ちょっと、カワハシ?」
未だ僅かに寝ぼけ眼をこすりながら、カレンダーに顔を近付ける。
そこには、はっきりくっきりと赤い文字で、『結婚式に無理やり参加させられる』と書いてあった。
「・・・まさかとは思うけど、忘れてたとか言う?」
「聞いて驚け。そのまさかだ」
「もー!」
呆れる輝愛だったが、呼ばれている披露宴の開始時刻は15時なので、別に遅刻しそうな訳でもないのだが。
「あ、スーツださなきゃ」
「昨日カワハシが寝た後に、ちゃんと出しときました」
「祝儀袋とふくさ」
「こないだクローゼットから発掘しときました」
今更言い出す千影に、しかし輝愛は呆れ顔ながらも、準備したものを指差す。
なかなかどうして、大変良くできた娘分のおかげで、特に今から買いに走るものは無さそうだ、と、安堵のため息をつく。
「まったく、たまにちょこっと大胆に抜けてる時あるよね、カワハシ」
「疲れてんの」
悪びれる様子も無い彼に、しかしそれも最もなので、彼女は苦笑するのだった。
「招待状と、ご祝儀袋ね。中身は自分で入れてね。で、ふくさそこね。スーツはそこのハンガーにかけてあるブラックのやつでしょ?で、アイロンかけたワイシャツはそっちのハンガー。何色がいいか分かんなかったからね、色んなの出てるから選んでね。ネクタイは白でいいのかな?他のもそこにかけてあるから。で、靴は磨いといたから玄関に出てるやつね。あとはカワハシの身一つよ」
「誠に有難うございます。お嬢様」
ははあ、と頭を大きく垂れて大袈裟に礼を述べながら、届いてからロクに目も通していなかった招待状を眺める。
本来なら、招待状に同封されているハガキで、出席の有無を通知するのだが、今回に限っては、アクションチームのほぼ全員が『強制参加』状態になっており、有無を言わさず『参加』扱いになると言われていたので、別段、詳しく内容を把握していなかったのだ。
輝愛に限っては、まだ面識がないのと、入団して間もない事もあり、強制参加にはなっていないのだが。
今回の新郎新婦は、千影本人もチーム全体にもとても深く縁のある二人で、新郎は演出家、新婦は女優。
新郎の方は、チームの仕事でも、そのほかの舞台の仕事でも、しょっちゅう顔を合わせる大学時代からの先輩で、新婦のほうも、そこかしこの舞台で見かける実力派であり、業界関係者も注目するカップルの挙式なのである。
「あれま、直筆?」
目を落とした招待状には、今まで気づかなかった、直筆のメッセージが。
呟いて、久しぶりに見る先輩の字を目で追って、
「うげ」
かえるがつぶされたような声を出す。
「ん?どしたの?」
招待状を持ったまま固まってしまった千影を、下から覗き込む輝愛。
「・・・・・トーイ、お前、今日、暇?」
「うん。大掃除しようと思って。丁度いいことに怠け者カワハシが出かけるし」
若干、最後の方に気になる台詞があったが、今の千影にそこを突っ込む余裕は、最早皆無だった。
「今何時!?」
「え?11時ちょっと過ぎたとこ」
答える輝愛の台詞に、千影の顔がさあっ、と青くなって行く。
「取り合えず、着替えろ!即効!」
「へ?え?なんで?」
「いいから早く!!!!」
怒鳴って、自分も大急ぎで先ほど指し示されたスーツ一式などをかばんに詰め込み始める。
「ちょちょちょ、何が起こったの?」
「今からだぞ!?」
「はあ?」
完全に顔色を失って、蒼白になった千影が、若干寝癖の残る頭を抱えながら、
「今から服買って靴買って髪の毛いじってメイクして!?」
「カワハシ化粧するの?」
「馬鹿、仕事でもないのにするかよ」
「じゃあなんで」
圧倒的に、事態を把握する術を与えられないまま圧されまくってる輝愛が、目を見開いて唖然としたまま、何とか口を動かす。
「お前だよ!」
「はあ?」
千影はバッグに整髪料やら財布やら祝儀袋やら、取り合えず突っ込みながら、
「お前も行かなきゃいけなくなったの!」
「どこに」
何でわかんねぇんだこいつ
と言う顔で、千影が怒鳴る。
「結婚式!!!」
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