桃屋の創作テキスト置き場
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■こんぺいとう PROLOGUE -千影sideー■
―――うざったい。
雨は苦手だ。
嫌いと言う訳ではないけれど、靴に水が滲みるし、傘を持つのは面倒だし。
やはり、苦手だ。
深夜である。
明かりの灯っている窓はもう殆ど見受けられない。
それでも、腹が減ってはなんとやら。
夜食を買いに、近くのコンビニまで足を伸ばした。
尻のポケットに財布を一つ。
片手でビニール傘を差し、くわえ煙草でいつも通り、近道の小さな公園を抜ける。
―――と。
――――キィ
小さく音がした。
傘をずらして、音のした方向に視線を向ける。
ブランコに座ったままぼーっとしている奴がいる。
俺は曇りかけた眼鏡越しに目を細める。
どうやら子供の様だ。
・・・・何やってんだかね、こんな夜中に。
声をかけようとも思わず、俺はのそのそとコンビニへと向かった。
適当に食い物と酒と煙草を買い込んで、再び雨の中に踏み出す。
もう地面はびしゃびしゃになり、水溜りになっている。
「・・・スニーカーやめて雪駄にして正解だったな」
コンビニのビニール袋を引っさげ、ジーンズにTシャツに雪駄と言う、何だかよく分からない格好のまま、俺はまたのろのろと帰り道を歩んだ。
何故か、頭からはあのガキの残像が消えなかった。
――――まだ居やがるよ、あのガキ
行きと同じく近道の公園を抜けようとした。
先ほど見掛けた子供が、いまだ同じ場所に留まっていた。
よくよく見れば、傘の一つも差してはいない。
何故かひどくそのガキが気にかかった。
・・・・・・放置して、翌日遺体で発見、なんてのはいくらなんでも寝覚めが悪いしなあ・・・・
がしがしと頭をかいて、仕方なく、その子供の方へ向かって歩を進める。
――――キィ
小さく、悲しげな声でブランコが泣いた。
俺はそのガキからちょっとばかり距離を置いた場所に立ち、煙草に火をつけ、くわえる。
しばらく、そのまま眺めていた。
ふと、ガキが頭を上げる。
目が合った。
その両目からは、止め処なく涙が溢れている。
一瞬、ほんの一瞬息を飲んだが、すぐに俺は口を開く。
「何してんだ」
「雨やどり」
俺の問いに、何の感情も込めずに答える。
しかし―――
「・・・・雨やどれてねーじゃん」
傘も差さず、ぬれねずみになっているそのガキを、俺は呆れてまじまじと見つめる。
・・・・・・・ちょいと可笑しな奴だったのかなあ・・・
早くも後悔したりもしたが、そこはそれ、声をかけた俺の落ち度だ。
「親はどうした?」
「死んだよ」
又しても二の句が続けられない様な、さっぱりとした答え。
「家はどこだ?」
「もうなくなっちゃったよ」
・・・・・・・オイオイオイ。
こいつはマジでヤバイお子様かも・・・
頬に一筋冷や汗が伝う。
「――――ここで、何してる?」
その問いに、今まで感情を悟らせなかったその表情が、わずかに動いた。
「・・・・・・雨やどり」
苦痛の、表情だ。
―――ああ、だからか。こいつがこんなに気にかかったのは。
俺はわずかの間、まぶたを閉じる。
絶望した、瞳だ。
苦痛な、悲痛な、瞳だ。
俺はこの眼をよく知っている。
だから、こんなに気になってしまったんだ。
「・・・・ほんと、やんなるぜ全く」
呟いてがしがし頭をかく。
目の前にいる、年端もいかないコイツに、ひどく腹を立てている自分が居た。
―――お前の中での世の中は、それだけで終わっちまうのかよ。
そんなのは、
そんなのは、許さない。
死に逃げようとしている奴は、皆同じ顔をしている。
そしてこのガキもまた然り、だ。
生きたくても、生きられない人間なんて、この世界には、はいて捨てるほどいるのに。
俺はムカムカする思いを抑えもせずに言った。
「――――――来い」
そう、一言だけ言って。
俺はガキをひょいと抱えて歩き出した。
ビニール傘は、邪魔だから公園のゴミ箱に捨てた。
傘の代わりに、このか細いガキを抱えて。
俺は家路を辿った。
少なくとも、抗議の声は聞こえてこなかった。
それが、唯一の救いであり、非難でもあった。
ちなみに、俺がそのガキが女の子だって気付いたのは、帰宅してそいつを風呂に突っ込もうとした時だった。
・・・・・あーあ・・・
―――うざったい。
雨は苦手だ。
嫌いと言う訳ではないけれど、靴に水が滲みるし、傘を持つのは面倒だし。
やはり、苦手だ。
深夜である。
明かりの灯っている窓はもう殆ど見受けられない。
それでも、腹が減ってはなんとやら。
夜食を買いに、近くのコンビニまで足を伸ばした。
尻のポケットに財布を一つ。
片手でビニール傘を差し、くわえ煙草でいつも通り、近道の小さな公園を抜ける。
―――と。
――――キィ
小さく音がした。
傘をずらして、音のした方向に視線を向ける。
ブランコに座ったままぼーっとしている奴がいる。
俺は曇りかけた眼鏡越しに目を細める。
どうやら子供の様だ。
・・・・何やってんだかね、こんな夜中に。
声をかけようとも思わず、俺はのそのそとコンビニへと向かった。
適当に食い物と酒と煙草を買い込んで、再び雨の中に踏み出す。
もう地面はびしゃびしゃになり、水溜りになっている。
「・・・スニーカーやめて雪駄にして正解だったな」
コンビニのビニール袋を引っさげ、ジーンズにTシャツに雪駄と言う、何だかよく分からない格好のまま、俺はまたのろのろと帰り道を歩んだ。
何故か、頭からはあのガキの残像が消えなかった。
――――まだ居やがるよ、あのガキ
行きと同じく近道の公園を抜けようとした。
先ほど見掛けた子供が、いまだ同じ場所に留まっていた。
よくよく見れば、傘の一つも差してはいない。
何故かひどくそのガキが気にかかった。
・・・・・・放置して、翌日遺体で発見、なんてのはいくらなんでも寝覚めが悪いしなあ・・・・
がしがしと頭をかいて、仕方なく、その子供の方へ向かって歩を進める。
――――キィ
小さく、悲しげな声でブランコが泣いた。
俺はそのガキからちょっとばかり距離を置いた場所に立ち、煙草に火をつけ、くわえる。
しばらく、そのまま眺めていた。
ふと、ガキが頭を上げる。
目が合った。
その両目からは、止め処なく涙が溢れている。
一瞬、ほんの一瞬息を飲んだが、すぐに俺は口を開く。
「何してんだ」
「雨やどり」
俺の問いに、何の感情も込めずに答える。
しかし―――
「・・・・雨やどれてねーじゃん」
傘も差さず、ぬれねずみになっているそのガキを、俺は呆れてまじまじと見つめる。
・・・・・・・ちょいと可笑しな奴だったのかなあ・・・
早くも後悔したりもしたが、そこはそれ、声をかけた俺の落ち度だ。
「親はどうした?」
「死んだよ」
又しても二の句が続けられない様な、さっぱりとした答え。
「家はどこだ?」
「もうなくなっちゃったよ」
・・・・・・・オイオイオイ。
こいつはマジでヤバイお子様かも・・・
頬に一筋冷や汗が伝う。
「――――ここで、何してる?」
その問いに、今まで感情を悟らせなかったその表情が、わずかに動いた。
「・・・・・・雨やどり」
苦痛の、表情だ。
―――ああ、だからか。こいつがこんなに気にかかったのは。
俺はわずかの間、まぶたを閉じる。
絶望した、瞳だ。
苦痛な、悲痛な、瞳だ。
俺はこの眼をよく知っている。
だから、こんなに気になってしまったんだ。
「・・・・ほんと、やんなるぜ全く」
呟いてがしがし頭をかく。
目の前にいる、年端もいかないコイツに、ひどく腹を立てている自分が居た。
―――お前の中での世の中は、それだけで終わっちまうのかよ。
そんなのは、
そんなのは、許さない。
死に逃げようとしている奴は、皆同じ顔をしている。
そしてこのガキもまた然り、だ。
生きたくても、生きられない人間なんて、この世界には、はいて捨てるほどいるのに。
俺はムカムカする思いを抑えもせずに言った。
「――――――来い」
そう、一言だけ言って。
俺はガキをひょいと抱えて歩き出した。
ビニール傘は、邪魔だから公園のゴミ箱に捨てた。
傘の代わりに、このか細いガキを抱えて。
俺は家路を辿った。
少なくとも、抗議の声は聞こえてこなかった。
それが、唯一の救いであり、非難でもあった。
ちなみに、俺がそのガキが女の子だって気付いたのは、帰宅してそいつを風呂に突っ込もうとした時だった。
・・・・・あーあ・・・
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