桃屋の創作テキスト置き場
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■BGM 2 ー愛し子の 墓辺吹く風 静かなれー 10■
やっと一息つけたのは、夕食の並んだテーブルについた時だった。
「・・・・・・・・・・はあ・・・・」
でかいテーブルに所狭しと並べられた、旨そうな料理の数々。
それを俺はもさもさと口に運ぶ。
「・・・何故、こげに疲労せねばならんとですか・・・」
俺は憔悴しきった顔で、目の前に腰掛ける金髪美女を見やる。
「ごめんね、父、あれでも昔よりマトモになったのよ」
「あれで・・・」
昔がどれ程凄かったのか、もはや俺には想像すら不可能である。
あの後、何だかんだで騒いでいる内に、(まあ俺とオッサン国王が喧嘩してただけだけど)こんな時間になってしまい、結局、挨拶もろくすっぽしない内に、この夕食にあり付いていると言う訳なのだが。
「一応、明日、もう一回報告宜しく、ルカ」
「レイ」
声が頭上から降って来て、見上げたそこには男版カイこと、兄貴のレイ。
彼はするりと俺の隣の椅子に座って、メイドが運んで来た何とかのポタージュをすする。
「明日もあのオッサンと顔合わせにゃいかんのですか・・・」
俺は心底げんなりして、フランスパンにバターを塗りたくって、口に突っ込んだ。
「まあ、仕方ないと思って諦めてよ。で、報告終わったらルカは自由の身だからさ」
一国の、一応姫君連れて歩いてたんだから、そこんとこ勘弁してやって。
と、レイが上手くウィンクよこしながら、
まあ、確かにちゃんと経緯とか、説明せにゃいかんかも知れんのだろうが。
あのオッサン相手だと、そんな事不要な気すらしてくる。
見た目も然りだが、オーラとか威厳とか、重要なのだと初めて知った。うん。
と、そこで俺はレイの台詞に『ん?』と首を傾げ、
「俺は自由の身、って・・・カイは?」
レイは俺の質問に、呆れた様に目を見開き、
「何言ってるのルカ?カイは一応この国の姫なんだよ?式典もあるし、こないだも勝手に出て行っただけで、誰も放浪の旅なんか許した訳じゃないんだ」
「そっか・・そりゃそうか・・」
変に期待した俺が馬鹿だとは思うけど、またカイと一緒に旅出来るんだ、なんて、そこまで都合良く行かないのは分かってはいたけど・・・やっぱそうか・・。
だとしたら、あの時カイの言うとおり、セイン・ロードに来るんじゃなかった。
・・・なんて思ったりした。
別にカイが恋人だとか、将来を誓い合ったとか、そーゆーなんつーの?
惚れたとか惚れられたとか・・・・とにかくそーゆーのは無い・・けど・・・
むう・・・。
「――ねえ、レイ兄貴」
カイがナイフとフォークを置いて、声だけで兄に話し掛ける。
「式典、出なきゃ駄目?」
カイの言葉に、レイは優しく微笑んで、
「多分な」
と、一言だけ告げた。
カイは不機嫌に口をつぐんで、再び食事の続きを始めた。
俺は、どうにも彼女の素振りが気になって、助けを求める様にレイを見たが、彼も困った様に肩をすくめるだけだった。
瞬間――
「伏せろ!」
直感だけで俺は叫ぶ。
給仕達が一斉にその場に伏せた次の瞬間、
ドンっ!
と言う爆発音と共に、窓のガラスが勢い良く割れた。
「無事か!?」
部屋を見回すと、割れた破片で軽症を負った者は居たが、大怪我をした者は居ないようだった。
「クソッ!」
俺は割れた窓から飛び出る。
気配が残っている。
と言う事は、罠か、誘い。
いずれにせよ、良くない方向である事は確かである。
「ええい、ままよ!」
どっちであれ、行くしかないなら、突っ込むのみ。
俺は気配を辿り、庭園で足を止める。
王宮の中央部にある、ここの敷地内で一番大きな庭園である。
馬鹿でかい広さで、例えが悪いが、切った張ったをするには十分過ぎる広さである。
そこは、一種異様な空気が漂っていた。
真っ暗な漆黒の闇。
その中に浮かぶ、魔術で灯された光。
その光の中に、ぽっかりと浮かぶシルエット。
道化の様な衣装に身を包み、瞳はがらんどう、唇は深紅に縁取られ、場違いな笑みが象られている。
見覚えがあった。
アレは―――
あの時のピエロと、瓜二つだ。
奴は、俺に向かって丁寧にお辞儀をする。
それこそあのピエロ同様、空中に浮かんだままで。
「アヤマチニハシヲ ジヒハコントンノフチ」
以前と全く同じ台詞をつむぐピエロ。
いつの間にか、レイとカイも俺の後ろに並んでいた。
「・・・続きは、すぐ帰れ、愛しき写し子よ、だっけか?」
俺は一回喉を鳴らしてから、口を開く。
ピエロは大げさに頭を振って、紅の唇よより一層吊り上げる。
「アトヲオヘイトシキウツシゴヨ」
「!」
カイが声にならない悲鳴を上げたのが、気配だけで分かった。
「黒化塵(デスド・バッシュ)!」
俺は急ぎ結んだ印を開放する。
しかし、ピエロは優雅に身を翻し、これをあっさり避けてしまう。
「水崩陣(アクア・フレイム)!」
レイが俺の術のすぐ後に、印を開放する。
普通ならば避けられない、中範囲射程の術である。
しかし、
バシュ!
事もあろうに、奴は右手で術を収束させ、握りつぶした。
「くそっ」
レイの舌打ちが響く。
ピエロが動く。
俺は嫌な予感がして、理由も無くカイの元へ走る。
何だか分からんが、ヤバイ!!
「カイ!」
俺が辿り着くより早く、ピエロはカイの目の前に顔を寄せ、
「何故」
と、低くくぐもった声で呻いた。
ピエロのカギ爪が、カイの頬に浅い傷を作る。
俺もレイも動けなかった。
動かなかったのではない。
動くと、誰かが死ぬ。
そう分かっていたから、動けなかった。
カイは微動だにせず、真っ直ぐにピエロと対峙している。
再びピエロが、途切れていた台詞を紡ぐ。
「何故、何故、あなただけ生きておられるのですか」
カイは、これ以上に無い程目を見開き、苦痛の表情になった。
「カイ!」
俺は膝から崩れかけたカイを必死に抱える。
ピエロは、面白そうな表情で、再び宙にぷかりと浮き、カイを抱き締める俺を、愉快そうに眺めている。
「死にますか」
くぐもった声で、さも愉快そうに。
「生憎、死ぬ予定は無えなあ、今のところ」
「彼女をお渡し頂ければ、貴方様は不問に致しますよ?」
カギ爪をぱちり、と鳴らしながら、どこかで聞いた事ある様な台詞を言う。
「それも生憎だな、相方見捨てて逃げるなんざ、死ぬより嫌なこった」
「ならばやはり、死ぬべきでしょう」
カギ爪が、パチン!
と音を立てる。
刹那、
めきめきめきっ!
と空間が音を立てて裂け、そこから無数の下等魔族(ヴァルジャ・デーモン)が姿を現す。
「くそっ」
「さあ、姫様を巡った攻防戦の、始まりですよ」
ピエロは、それこそ不敵に笑った。
やっと一息つけたのは、夕食の並んだテーブルについた時だった。
「・・・・・・・・・・はあ・・・・」
でかいテーブルに所狭しと並べられた、旨そうな料理の数々。
それを俺はもさもさと口に運ぶ。
「・・・何故、こげに疲労せねばならんとですか・・・」
俺は憔悴しきった顔で、目の前に腰掛ける金髪美女を見やる。
「ごめんね、父、あれでも昔よりマトモになったのよ」
「あれで・・・」
昔がどれ程凄かったのか、もはや俺には想像すら不可能である。
あの後、何だかんだで騒いでいる内に、(まあ俺とオッサン国王が喧嘩してただけだけど)こんな時間になってしまい、結局、挨拶もろくすっぽしない内に、この夕食にあり付いていると言う訳なのだが。
「一応、明日、もう一回報告宜しく、ルカ」
「レイ」
声が頭上から降って来て、見上げたそこには男版カイこと、兄貴のレイ。
彼はするりと俺の隣の椅子に座って、メイドが運んで来た何とかのポタージュをすする。
「明日もあのオッサンと顔合わせにゃいかんのですか・・・」
俺は心底げんなりして、フランスパンにバターを塗りたくって、口に突っ込んだ。
「まあ、仕方ないと思って諦めてよ。で、報告終わったらルカは自由の身だからさ」
一国の、一応姫君連れて歩いてたんだから、そこんとこ勘弁してやって。
と、レイが上手くウィンクよこしながら、
まあ、確かにちゃんと経緯とか、説明せにゃいかんかも知れんのだろうが。
あのオッサン相手だと、そんな事不要な気すらしてくる。
見た目も然りだが、オーラとか威厳とか、重要なのだと初めて知った。うん。
と、そこで俺はレイの台詞に『ん?』と首を傾げ、
「俺は自由の身、って・・・カイは?」
レイは俺の質問に、呆れた様に目を見開き、
「何言ってるのルカ?カイは一応この国の姫なんだよ?式典もあるし、こないだも勝手に出て行っただけで、誰も放浪の旅なんか許した訳じゃないんだ」
「そっか・・そりゃそうか・・」
変に期待した俺が馬鹿だとは思うけど、またカイと一緒に旅出来るんだ、なんて、そこまで都合良く行かないのは分かってはいたけど・・・やっぱそうか・・。
だとしたら、あの時カイの言うとおり、セイン・ロードに来るんじゃなかった。
・・・なんて思ったりした。
別にカイが恋人だとか、将来を誓い合ったとか、そーゆーなんつーの?
惚れたとか惚れられたとか・・・・とにかくそーゆーのは無い・・けど・・・
むう・・・。
「――ねえ、レイ兄貴」
カイがナイフとフォークを置いて、声だけで兄に話し掛ける。
「式典、出なきゃ駄目?」
カイの言葉に、レイは優しく微笑んで、
「多分な」
と、一言だけ告げた。
カイは不機嫌に口をつぐんで、再び食事の続きを始めた。
俺は、どうにも彼女の素振りが気になって、助けを求める様にレイを見たが、彼も困った様に肩をすくめるだけだった。
瞬間――
「伏せろ!」
直感だけで俺は叫ぶ。
給仕達が一斉にその場に伏せた次の瞬間、
ドンっ!
と言う爆発音と共に、窓のガラスが勢い良く割れた。
「無事か!?」
部屋を見回すと、割れた破片で軽症を負った者は居たが、大怪我をした者は居ないようだった。
「クソッ!」
俺は割れた窓から飛び出る。
気配が残っている。
と言う事は、罠か、誘い。
いずれにせよ、良くない方向である事は確かである。
「ええい、ままよ!」
どっちであれ、行くしかないなら、突っ込むのみ。
俺は気配を辿り、庭園で足を止める。
王宮の中央部にある、ここの敷地内で一番大きな庭園である。
馬鹿でかい広さで、例えが悪いが、切った張ったをするには十分過ぎる広さである。
そこは、一種異様な空気が漂っていた。
真っ暗な漆黒の闇。
その中に浮かぶ、魔術で灯された光。
その光の中に、ぽっかりと浮かぶシルエット。
道化の様な衣装に身を包み、瞳はがらんどう、唇は深紅に縁取られ、場違いな笑みが象られている。
見覚えがあった。
アレは―――
あの時のピエロと、瓜二つだ。
奴は、俺に向かって丁寧にお辞儀をする。
それこそあのピエロ同様、空中に浮かんだままで。
「アヤマチニハシヲ ジヒハコントンノフチ」
以前と全く同じ台詞をつむぐピエロ。
いつの間にか、レイとカイも俺の後ろに並んでいた。
「・・・続きは、すぐ帰れ、愛しき写し子よ、だっけか?」
俺は一回喉を鳴らしてから、口を開く。
ピエロは大げさに頭を振って、紅の唇よより一層吊り上げる。
「アトヲオヘイトシキウツシゴヨ」
「!」
カイが声にならない悲鳴を上げたのが、気配だけで分かった。
「黒化塵(デスド・バッシュ)!」
俺は急ぎ結んだ印を開放する。
しかし、ピエロは優雅に身を翻し、これをあっさり避けてしまう。
「水崩陣(アクア・フレイム)!」
レイが俺の術のすぐ後に、印を開放する。
普通ならば避けられない、中範囲射程の術である。
しかし、
バシュ!
事もあろうに、奴は右手で術を収束させ、握りつぶした。
「くそっ」
レイの舌打ちが響く。
ピエロが動く。
俺は嫌な予感がして、理由も無くカイの元へ走る。
何だか分からんが、ヤバイ!!
「カイ!」
俺が辿り着くより早く、ピエロはカイの目の前に顔を寄せ、
「何故」
と、低くくぐもった声で呻いた。
ピエロのカギ爪が、カイの頬に浅い傷を作る。
俺もレイも動けなかった。
動かなかったのではない。
動くと、誰かが死ぬ。
そう分かっていたから、動けなかった。
カイは微動だにせず、真っ直ぐにピエロと対峙している。
再びピエロが、途切れていた台詞を紡ぐ。
「何故、何故、あなただけ生きておられるのですか」
カイは、これ以上に無い程目を見開き、苦痛の表情になった。
「カイ!」
俺は膝から崩れかけたカイを必死に抱える。
ピエロは、面白そうな表情で、再び宙にぷかりと浮き、カイを抱き締める俺を、愉快そうに眺めている。
「死にますか」
くぐもった声で、さも愉快そうに。
「生憎、死ぬ予定は無えなあ、今のところ」
「彼女をお渡し頂ければ、貴方様は不問に致しますよ?」
カギ爪をぱちり、と鳴らしながら、どこかで聞いた事ある様な台詞を言う。
「それも生憎だな、相方見捨てて逃げるなんざ、死ぬより嫌なこった」
「ならばやはり、死ぬべきでしょう」
カギ爪が、パチン!
と音を立てる。
刹那、
めきめきめきっ!
と空間が音を立てて裂け、そこから無数の下等魔族(ヴァルジャ・デーモン)が姿を現す。
「くそっ」
「さあ、姫様を巡った攻防戦の、始まりですよ」
ピエロは、それこそ不敵に笑った。
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