桃屋の創作テキスト置き場
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■天使の羽根■
「じゃあ、ちょっと行って来るから」
そう言って、行き先も告げないまま出て行ってしまった。
――もう、何なのよ一体!!
折角の久々のお休みだって言うのに。
しかも巡り合わせたかの様に、うまい事クリスマス・イヴにお休みが重なったって言うのに。
あの人は、あたしの事なんててーんで無視して、さっさと一人、どこかへ消えてしまった。
「もう、ウィンの馬鹿っ!!」
私は座っていたソファーにあった可愛いピンクのクッションを、今し方ウィンが出て行ったドアに向かって投げ付けた。
・・・そりゃあ、何かを期待してた訳じゃないけどさ・・・
あたしに取っては、年に一回のイベントだとしても、ウィンにと取ってはいつもと変わらない日常なのかも知れないし。
「だからって、普通クリスマス・イヴに行き先も告げずにいなくなっちゃったりする訳~!?」
まだ憤りが納まらない私は、自分で投げたハートのクッションに向かって呟く。
・・・ご飯くらい、一緒に食べたかったのになあ・・・
ふうっ、と一つ小さくため息。
あのウィン事だもの。
朝からおめかしして、洋服選んで、お化粧して、うきうきしながら待ち合わせて恋人同士のデートvv
・・・なーんて贅沢は言わない。
彼が、そーゆーのに疎いってのは、きっとあたしが一番良く知ってる筈だし。
だから、いつも通りで全然良いから。いつものお店で、いつも通りにご飯食べれたら・・・
なーんて思ってたのに。
そんな、大して贅沢じゃない(と思う)乙女の切なる願いさえ、叶えてくれないって言うのかしら。
「・・・サンタクロースなんて、やっぱり居ないのね・・・ううう」
泣きべそをかきながら、のそのそとクッションを拾いに行く。
ウィンは一度出掛けたら、調べ物やら資料集めやら、食事やら何やらで、そうそう帰っては来ないのだ。
「仕方ないなあ~。不本意だけど、事務所のお掃除でもしよう」
重たい腰を上げたのは、彼が出て行ってしばらく経ってからの事だった。
近頃、仕事で外出続きで、ロクに掃除していなかった事務所を片付ける。
しかし、働く手とは裏腹に、頭は彼の事ばかり。
ウィンは今どこに居るんだろう。
何をしているんだろう。
ちょっとはあたしの事を、思い出してくれてるだろうか?
「・・・・まだかなあ・・・・」
思い出したなら、早く帰って来て欲しいモンである。
思い出さないなら、早くあたしの事を思い出して欲しい。
我侭と言う無かれ。これが恋する乙女の心中なのだ。
ーあと数時間。
数時間でイヴが終わってしまう。
仕事続きで、ロクに休めなかったから、疲れているだろうに。
全く、仕事になると突っ走っちゃうんだから。少しは自分の事も気にかけてあげなきゃいけないのに。
まあ、そーゆーウィンの真っ直ぐなトコ、大好きだけど。
でも、やっぱり恋する乙女なミアちゃんとしては、イヴくらい、ちゃあんとお休みして欲しかったのだ。
「こんな事なら、最初からウィンに予約入れておけば良かったわ」
イヴくらい、仕事休んで一緒に居て欲しいって。
まあ、私の口からそんな大胆な発言が可能かは謎だけど・・
でもでも。
ウィンは頑張りすぎる。
それが私は心配なのだ。
あの一生懸命な所が、そのうち祟って来るんじゃないかと。
彼の性格からして、手を抜くとか、おざなりにするって事は、まずないから。
自分より、他人を優先して、それで苦しい思いをしている事もあるのを、知っているから。
考えているうちに、彼の笑顔が浮かんできた。
その笑顔が、優しくて。恋しくて。
一人でぽつりと座り込んでるあたしの、寂しいクリスマス・イヴを、否が応にも現実を突き付けてくれちゃったりなんかしてさ。
何か、何か涙まで浮かんできちゃったじゃない!!
もう、あれもこれも全部ウィンのせいなんだからね!
ウィンが泣かないから、あたしが今こうして代わりに泣いてあげてるんだから!
我ながら訳の分からん理論を組み立て、涙を手で拭う。
でもー
でも、やっぱり。
「やっぱり心配だよ、ウィン・・・」
好きな人が痛いのも、苦しいのも、辛いのも、嫌だよ。
「何が心配なんだい?」
「へ・・??ウ、ウィン!?」
独り言に返答が返って来るなんて思ってなかったあたしは、驚き余ってソファーからずり落ちた。
そんなあたしを見つめ、ウィンは微笑みながらコートを脱ぐ。
「遅くなってごめんね、ミア。大切な買い物があったから」
「大切な、買い物・・?」
そんな話は聞いていなかった。と言うか、言ってくれなかったじゃない。
「わざわざ・・イヴに?」
涙の跡を悟られまいと、あたしはちょっといたずらっぽく問う。
「そう。とても大切なお買い物。――ミア、手、出してみて」
「へ?」
「へじゃなくて手だよ。出して」
彼は、戸惑うあたしを無視して、その大きな手で、あたしの両の掌を開く。
彼の手から、あたしの両手に落とされた、小さな赤い、箱。
「何これ?」
「開けてごらん」
ウィンは、楽しそうに微笑んだまま。
言われるがままに、あたしは結んであったリボンをほどき、小さな箱を開ける。
・・・あ・・・・
「これって・・・」
「どう?気に入ってくれた?ミアにぴったりだと思ったんだ」
ウィンが前屈みになって見つめる。私の両手の上には、可愛い、天使の羽根の形をしたネックレス。
「やっぱり、一人で探すのって難しかったよ。ミアも連れて行けば良かったね」
苦笑しながら、「一人で買うのは、実は結構恥ずかしかった」と白状してくれたウィン。
「まさか、これ買う為にわざわざ・・?」
「う、んーまあ、そう言う事になっちゃうのかな?」
何故かばつが悪そうに、目線をそらして頬を掻く。
「ウィンが一人でアクセサリーショップで選んだんでしょ?」
彼がウィンドウの前で四苦八苦している姿を想像してしまい、吹き出してしまった。
「酷いなあミアは。やっぱり最初から連れて行けば良かった。そしたら・・」
「恥ずかしい思いもしなくて済んだし?」
「そう。それに、ミアを待たせて不安にさせちゃう事も無かっただろうし」
―え・・・それって・・・
ウィンは優しく微笑んで、軽くあたしを引き寄せてから、指であたしの頬を拭ってくれた。
「跡、付いてるよ。涙の」
やだ!ばれてないと思ったのに!!
・・・・・・流石ウィン。隠し事のつもりが全然隠れてなかったって事ね・・・
「ごめんね、黙って行ってしまって。お詫びと言っては何だけど、これから夕飯でも一緒に・・・」
「行く!行く!やったあ!そう言ってくれるの、実は待ってたんだから!!」
彼が言い終わらないうちに、あたしはピョンピョン跳ね上がって喜ぶ。
さっきまでのつまらなかった気持ちが嘘みたい。
やっぱり、あたしはウィンが大好きなのだ、と実感する。
彼の言葉一つで、こんなに元気になれちゃうんだから。
「では、参りましょうか」
ウィンが、あたしを見て笑いながら、手を差し伸べてくれる。
「はい、参りましょう」
あたしも乗じて、笑いながら彼の手を取った。
小雪のちらつく中、足早に進むあたしとウィンを、
ウィンがくれた天使の羽根が見守っていたー
「じゃあ、ちょっと行って来るから」
そう言って、行き先も告げないまま出て行ってしまった。
――もう、何なのよ一体!!
折角の久々のお休みだって言うのに。
しかも巡り合わせたかの様に、うまい事クリスマス・イヴにお休みが重なったって言うのに。
あの人は、あたしの事なんててーんで無視して、さっさと一人、どこかへ消えてしまった。
「もう、ウィンの馬鹿っ!!」
私は座っていたソファーにあった可愛いピンクのクッションを、今し方ウィンが出て行ったドアに向かって投げ付けた。
・・・そりゃあ、何かを期待してた訳じゃないけどさ・・・
あたしに取っては、年に一回のイベントだとしても、ウィンにと取ってはいつもと変わらない日常なのかも知れないし。
「だからって、普通クリスマス・イヴに行き先も告げずにいなくなっちゃったりする訳~!?」
まだ憤りが納まらない私は、自分で投げたハートのクッションに向かって呟く。
・・・ご飯くらい、一緒に食べたかったのになあ・・・
ふうっ、と一つ小さくため息。
あのウィン事だもの。
朝からおめかしして、洋服選んで、お化粧して、うきうきしながら待ち合わせて恋人同士のデートvv
・・・なーんて贅沢は言わない。
彼が、そーゆーのに疎いってのは、きっとあたしが一番良く知ってる筈だし。
だから、いつも通りで全然良いから。いつものお店で、いつも通りにご飯食べれたら・・・
なーんて思ってたのに。
そんな、大して贅沢じゃない(と思う)乙女の切なる願いさえ、叶えてくれないって言うのかしら。
「・・・サンタクロースなんて、やっぱり居ないのね・・・ううう」
泣きべそをかきながら、のそのそとクッションを拾いに行く。
ウィンは一度出掛けたら、調べ物やら資料集めやら、食事やら何やらで、そうそう帰っては来ないのだ。
「仕方ないなあ~。不本意だけど、事務所のお掃除でもしよう」
重たい腰を上げたのは、彼が出て行ってしばらく経ってからの事だった。
近頃、仕事で外出続きで、ロクに掃除していなかった事務所を片付ける。
しかし、働く手とは裏腹に、頭は彼の事ばかり。
ウィンは今どこに居るんだろう。
何をしているんだろう。
ちょっとはあたしの事を、思い出してくれてるだろうか?
「・・・・まだかなあ・・・・」
思い出したなら、早く帰って来て欲しいモンである。
思い出さないなら、早くあたしの事を思い出して欲しい。
我侭と言う無かれ。これが恋する乙女の心中なのだ。
ーあと数時間。
数時間でイヴが終わってしまう。
仕事続きで、ロクに休めなかったから、疲れているだろうに。
全く、仕事になると突っ走っちゃうんだから。少しは自分の事も気にかけてあげなきゃいけないのに。
まあ、そーゆーウィンの真っ直ぐなトコ、大好きだけど。
でも、やっぱり恋する乙女なミアちゃんとしては、イヴくらい、ちゃあんとお休みして欲しかったのだ。
「こんな事なら、最初からウィンに予約入れておけば良かったわ」
イヴくらい、仕事休んで一緒に居て欲しいって。
まあ、私の口からそんな大胆な発言が可能かは謎だけど・・
でもでも。
ウィンは頑張りすぎる。
それが私は心配なのだ。
あの一生懸命な所が、そのうち祟って来るんじゃないかと。
彼の性格からして、手を抜くとか、おざなりにするって事は、まずないから。
自分より、他人を優先して、それで苦しい思いをしている事もあるのを、知っているから。
考えているうちに、彼の笑顔が浮かんできた。
その笑顔が、優しくて。恋しくて。
一人でぽつりと座り込んでるあたしの、寂しいクリスマス・イヴを、否が応にも現実を突き付けてくれちゃったりなんかしてさ。
何か、何か涙まで浮かんできちゃったじゃない!!
もう、あれもこれも全部ウィンのせいなんだからね!
ウィンが泣かないから、あたしが今こうして代わりに泣いてあげてるんだから!
我ながら訳の分からん理論を組み立て、涙を手で拭う。
でもー
でも、やっぱり。
「やっぱり心配だよ、ウィン・・・」
好きな人が痛いのも、苦しいのも、辛いのも、嫌だよ。
「何が心配なんだい?」
「へ・・??ウ、ウィン!?」
独り言に返答が返って来るなんて思ってなかったあたしは、驚き余ってソファーからずり落ちた。
そんなあたしを見つめ、ウィンは微笑みながらコートを脱ぐ。
「遅くなってごめんね、ミア。大切な買い物があったから」
「大切な、買い物・・?」
そんな話は聞いていなかった。と言うか、言ってくれなかったじゃない。
「わざわざ・・イヴに?」
涙の跡を悟られまいと、あたしはちょっといたずらっぽく問う。
「そう。とても大切なお買い物。――ミア、手、出してみて」
「へ?」
「へじゃなくて手だよ。出して」
彼は、戸惑うあたしを無視して、その大きな手で、あたしの両の掌を開く。
彼の手から、あたしの両手に落とされた、小さな赤い、箱。
「何これ?」
「開けてごらん」
ウィンは、楽しそうに微笑んだまま。
言われるがままに、あたしは結んであったリボンをほどき、小さな箱を開ける。
・・・あ・・・・
「これって・・・」
「どう?気に入ってくれた?ミアにぴったりだと思ったんだ」
ウィンが前屈みになって見つめる。私の両手の上には、可愛い、天使の羽根の形をしたネックレス。
「やっぱり、一人で探すのって難しかったよ。ミアも連れて行けば良かったね」
苦笑しながら、「一人で買うのは、実は結構恥ずかしかった」と白状してくれたウィン。
「まさか、これ買う為にわざわざ・・?」
「う、んーまあ、そう言う事になっちゃうのかな?」
何故かばつが悪そうに、目線をそらして頬を掻く。
「ウィンが一人でアクセサリーショップで選んだんでしょ?」
彼がウィンドウの前で四苦八苦している姿を想像してしまい、吹き出してしまった。
「酷いなあミアは。やっぱり最初から連れて行けば良かった。そしたら・・」
「恥ずかしい思いもしなくて済んだし?」
「そう。それに、ミアを待たせて不安にさせちゃう事も無かっただろうし」
―え・・・それって・・・
ウィンは優しく微笑んで、軽くあたしを引き寄せてから、指であたしの頬を拭ってくれた。
「跡、付いてるよ。涙の」
やだ!ばれてないと思ったのに!!
・・・・・・流石ウィン。隠し事のつもりが全然隠れてなかったって事ね・・・
「ごめんね、黙って行ってしまって。お詫びと言っては何だけど、これから夕飯でも一緒に・・・」
「行く!行く!やったあ!そう言ってくれるの、実は待ってたんだから!!」
彼が言い終わらないうちに、あたしはピョンピョン跳ね上がって喜ぶ。
さっきまでのつまらなかった気持ちが嘘みたい。
やっぱり、あたしはウィンが大好きなのだ、と実感する。
彼の言葉一つで、こんなに元気になれちゃうんだから。
「では、参りましょうか」
ウィンが、あたしを見て笑いながら、手を差し伸べてくれる。
「はい、参りましょう」
あたしも乗じて、笑いながら彼の手を取った。
小雪のちらつく中、足早に進むあたしとウィンを、
ウィンがくれた天使の羽根が見守っていたー
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