桃屋の創作テキスト置き場
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■一つ屋根の下 5題 今更、という気もすれば■
例えば、眠っている時にまじまじと見れる、顔の輪郭だとか、
ふとした時に支えてくれる腕だとか、
到底届かない背丈だとか。
どう頑張っても、決して勝てない訳で。
でもその理由を、あまりに当たり前すぎる理由を、ずっと失念していた自分に、大分、呆れたりもして。
◇
「・・・・・・おはよ」
「おはよう」
寝ぼけ眼のまま、背中からあたしを抱えるように肩に顎を乗せる。
目の前に見える腕は、筋肉質で、あたしのとは到底違う。
なんでだろ、おんなじ様に練習してるのに。
やってる年月が違うからだろうか。
でも、写真で見たあたしぐらいだった頃の彼も、今程までは行かないものの、しっかりとした体格だったのを思い出す。
なんか、不公平だなぁ。
以前彼にそう告げたら、眉尻を落として笑いながら言われた。
『しょうがないだろ』って。
何が『しょうがない』のか納得できなくて、ほっぺたを膨らませたのを覚えてる。
「ねみ~」
呟いて体重を乗せてくる彼の重さに耐え切れず、思わずずるずると下に沈んでいく。
「おもい~」
「あ、悪ぃ」
ようやく多少覚醒したのか、慌てて背中から離れる。
すっぽりと覆われていた背中から彼が離れると、一瞬、肌寒い様な気になる。
椅子から立ち上がって振り返って、彼の方へ向き直る。
「輝愛?」
「むー」
いくら背伸びをしても、やっぱり届かないし、腕を比べてみても、断然あたしの方がひょろっこくて。
「・・・ずるいなぁ」
「はあ?」
思わずぽろりと出た言葉に、肩を落とす彼。
「何で、そんなに何でもかんでもあたしに勝っちゃうのよ」
「何が」
訳が分からんと言った表情の彼に、やっぱりいつかのように頬を膨らませて。
「力も強いし、背も高いし、声も違うし、あたし何にも勝てないんだもん」
一個くらい、何かあなたより勝ってたいのに。
そう言うと、目の前の起き抜けの彼は、寝癖のついたままの頭を後ろ手にかいて、笑った。
「あ、ひど」
「だって・・お前、そりゃ無理だろ」
「何でよ」
一通り笑い終えて、目尻に浮いた涙を指で拭いながら。
「だって、俺は男で、お前は女なんだから」
「へ・・?」
「だろ?男の腕力なんかに勝つ必要、ないだろうが」
「・・・・」
「だって、せっかくお前は女の子なんだから」
力仕事は男の俺に任しておけば良い訳で、それはお前が負けてるとかじゃなくて。
だって、俺はお前に勝てないトコたくさんあるぞ?
お前が気付いてないだけで。
そう言って、彼はいつもの様に笑った。
そうだ、あまりに当たり前すぎて、忘れていた。
そう、例えば、彼のよく通るテノールの声とか、
あたしがすっぽり入ってしまう腕とか、
よっかかってもびくともしない背中とか。
言われて、今更気付く。
「でも、お前に勝とうなんて、俺は思わないぞ」
だって、どうやったって勝てないのが、分かってるから。
そう言うと、おでこに一瞬唇を落とす。
赤くなったあたしの頬を面白そうにつまんで、
「やっぱりお前、面白いわ」
と言い残すと、洗面所に消えていった。
今更何を、と言う気がするけれど、忘れていた事。
やっと少し気付いて、でも同時に分からないことも増えた。
何でもあたしに勝ってるのに、あたしに勝とうと思わないって、どーゆーこと?
顔洗って戻って来たら、もっかい聞いてみよう。
なんだか、また笑われそうな予感がしなくも無いけれど。
例えば、眠っている時にまじまじと見れる、顔の輪郭だとか、
ふとした時に支えてくれる腕だとか、
到底届かない背丈だとか。
どう頑張っても、決して勝てない訳で。
でもその理由を、あまりに当たり前すぎる理由を、ずっと失念していた自分に、大分、呆れたりもして。
◇
「・・・・・・おはよ」
「おはよう」
寝ぼけ眼のまま、背中からあたしを抱えるように肩に顎を乗せる。
目の前に見える腕は、筋肉質で、あたしのとは到底違う。
なんでだろ、おんなじ様に練習してるのに。
やってる年月が違うからだろうか。
でも、写真で見たあたしぐらいだった頃の彼も、今程までは行かないものの、しっかりとした体格だったのを思い出す。
なんか、不公平だなぁ。
以前彼にそう告げたら、眉尻を落として笑いながら言われた。
『しょうがないだろ』って。
何が『しょうがない』のか納得できなくて、ほっぺたを膨らませたのを覚えてる。
「ねみ~」
呟いて体重を乗せてくる彼の重さに耐え切れず、思わずずるずると下に沈んでいく。
「おもい~」
「あ、悪ぃ」
ようやく多少覚醒したのか、慌てて背中から離れる。
すっぽりと覆われていた背中から彼が離れると、一瞬、肌寒い様な気になる。
椅子から立ち上がって振り返って、彼の方へ向き直る。
「輝愛?」
「むー」
いくら背伸びをしても、やっぱり届かないし、腕を比べてみても、断然あたしの方がひょろっこくて。
「・・・ずるいなぁ」
「はあ?」
思わずぽろりと出た言葉に、肩を落とす彼。
「何で、そんなに何でもかんでもあたしに勝っちゃうのよ」
「何が」
訳が分からんと言った表情の彼に、やっぱりいつかのように頬を膨らませて。
「力も強いし、背も高いし、声も違うし、あたし何にも勝てないんだもん」
一個くらい、何かあなたより勝ってたいのに。
そう言うと、目の前の起き抜けの彼は、寝癖のついたままの頭を後ろ手にかいて、笑った。
「あ、ひど」
「だって・・お前、そりゃ無理だろ」
「何でよ」
一通り笑い終えて、目尻に浮いた涙を指で拭いながら。
「だって、俺は男で、お前は女なんだから」
「へ・・?」
「だろ?男の腕力なんかに勝つ必要、ないだろうが」
「・・・・」
「だって、せっかくお前は女の子なんだから」
力仕事は男の俺に任しておけば良い訳で、それはお前が負けてるとかじゃなくて。
だって、俺はお前に勝てないトコたくさんあるぞ?
お前が気付いてないだけで。
そう言って、彼はいつもの様に笑った。
そうだ、あまりに当たり前すぎて、忘れていた。
そう、例えば、彼のよく通るテノールの声とか、
あたしがすっぽり入ってしまう腕とか、
よっかかってもびくともしない背中とか。
言われて、今更気付く。
「でも、お前に勝とうなんて、俺は思わないぞ」
だって、どうやったって勝てないのが、分かってるから。
そう言うと、おでこに一瞬唇を落とす。
赤くなったあたしの頬を面白そうにつまんで、
「やっぱりお前、面白いわ」
と言い残すと、洗面所に消えていった。
今更何を、と言う気がするけれど、忘れていた事。
やっと少し気付いて、でも同時に分からないことも増えた。
何でもあたしに勝ってるのに、あたしに勝とうと思わないって、どーゆーこと?
顔洗って戻って来たら、もっかい聞いてみよう。
なんだか、また笑われそうな予感がしなくも無いけれど。
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